三菱総合研究所は今後のシニア市場を分析し、2019年1月23日に発表した。今後は団塊の世代が70代前半となり人口が増加する。スマホゲームやネット通販などデジタル利用が進んでおり、シニア市場でもデジタル活用が重要になりそうだ。
今後は60代の人口が減少していく一方、70代は人口増加が見込まれ有望な市場となる。60代は2015年には1831万2000人いたが25年には1488万2000人に減少し、70代は同期間に1414万人から1630万人へと増加する見通しだ(「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より)。
三菱総研は50~80代の消費者1万5000人のアンケートパネルを保有しており、12年から毎年6月にインターネット調査を実施している。そのデータを「コーホート分析」の手法で傾向を探った。
コーホートとは同じ期間に生まれた集団のことで、そのコーホートの回答結果が年を追うごとにどう推移したかを示すのを「コーホート別加齢変化グラフ」という。三菱総研は、1928~1932年生まれから1958~1962年生まれまで、5歳刻みで分けた7つのコーホートの調査結果を比較した。
例えば下の「睡眠時間(平日)」のグラフは、コーホート、つまり世代が上がるごとに睡眠時間が増え、同じ世代では年を重ねてもあまり上がらない傾向にある。つまり睡眠時間は、世代の違いによるコーホート効果が大きく、時代の変化による効果、加齢による効果は少ないとみられるわけだ。
スマホゲームが急拡大
団塊世代(1947~49年生まれ)に一部重なる1948~52年の世代は、2019年に67~71歳を迎え、今後の70代消費を支える。この世代を中心に見ると、「スマホゲームの急拡大が予想される」(三菱総研 未来構想センター主席研究部長 佐野紳也氏)傾向が明らかになった。
1948~52年生まれの世代では、余暇の過ごし方として「スマホや携帯のゲーム」を挙げた人が6年前の2%弱から、2018年の調査では5%弱まで上昇した。より下の世代ほど、「余暇にスマホゲーム」の比率が高くなる。ただ、課金をしているのは一部とみられ、また、多くの世代で18年は低下する傾向があったため、佐野氏は「19年の動向が注目される」としている。
1948~52年生まれの世代は、スマホゲームのように「一人で余暇・レジャーを楽しむ」と答える比率が上の世代より高い。こうした傾向を佐野氏は「Me消費」と特徴付ける。これからの世代の消費の特徴はMe消費と合わせて3つある。
もう1つが「手軽さ消費」だ。一例は、「ネットショッピング」を「月数回以上」利用する比率の高さ。これも世代効果が大きく、1948~52年生まれの世代は40%台と、その上の世代の20~30%台を上回る。シニア世代が顧客に多い企業でも、EC(電子商取引)サイトへの投資が急がれる。

「何より“貯筋”が大事」
3つ目は「Keep Young 消費」。運動や自己管理を通じた健康維持、ヘアカラーなど外見の若さの維持への消費が広がりそうだ。同社はネット上のリサーチコミュニティー手法「MROC」による分析で、一部の層では「PCやスマホでもっと健康管理ができるといい」というニーズがあるとする。
定性分析で70代男性のペルソナ策定を担当したプラチナ社会センターの劉瀟瀟(りゅう しょうしょう)氏は、「介護施設には入りたくなく、『筋肉は裏切らない、何より“貯筋”が大事』という意識が強い層もある」と指摘。ゲームに次いで健康アプリも、スマホを利用するシニア世代に一層広がる可能性がある。