タクシー配車サービスの“黒船”として、初めて上陸した大阪で話題を振りまくDiDiモビリティジャパンが、人知れず東京に進出。1月17日から都内でのトライアルを開始したことが分かった。新規登録で2500円分の無料クーポンを配布している。いち早く、サービスを試した。

DiDiモビリティジャパンはタクシー配車アプリのトライアルを都内で始めた
DiDiモビリティジャパンはタクシー配車アプリのトライアルを都内で始めた

 タクシー配車サービスの“東京決戦”が目前に迫っている。

 中国の配車サービス大手・滴滴出行(ディディチューシン)とソフトバンクとの共同出資会社、DiDiモビリティジャパンは、1月17日より都内で配車アプリのテスト運用を始めた。アプリを立ち上げると、「こっそり東京で試験中です」との案内が出るが、一般ユーザーでも利用可能な状態。本トライアルに参加しているタクシー会社は、第一交通産業とコンドルタクシー、東京タクシーなどだという。対象エリアは23区内で、今春をめどに正式なサービスが始まると見られる。

 タクシー配車サービスをめぐっては、18年9月にDiDiモビリティジャパンが第一交通産業と組んで大阪に初上陸。同じく9月、米国の配車サービス大手・ウーバーテクノロジーズも名古屋のフジタクシーグーループと協業し、タクシー配車サービスを始めた。注目の東京エリアでは、日本交通系のジャパンタクシーが提供する配車アプリ「Japan Taxi」(全国対応)が勢力を拡大する中で、12月にはDeNAが日の丸自動車や東都自動車などと「MOV(モブ)」の提供をスタート。運賃を広告主が負担する「0円タクシー」のキャンペーンが大きな話題を呼んだ。19年にはソニーグループと国際自動車、グリーンキャブなどが設立したみんなのタクシーも始動する計画がある。

 そんななかで、突然のDiDiの“東京進出”。早速、アプリを都内で使ってみた。

 まず、アプリをダウンロードし、新規登録を済ませると、2500円分のクーポンが発行された。クーポンは1000円分×2回、500円分×1回と、3回の乗車に対してそれぞれ割引を受けられるものだ。「東京限定」と銘打って1500円分のクーポンが得られる友達紹介キャンペーンもアプリ上で展開されている。

DiDiアプリのキャンペーン画面
DiDiアプリのキャンペーン画面

 アプリを立ち上げると、現在地の周辺地図の上に参加するタクシー会社の車両アイコンが複数出てくる。行き先を入力すると画面が切り替わり、「6分後に乗車」といった形で乗車時間の目安が示される。そして次の画面では、詳細地図をタップして乗車地点を指定、「注文する」アイコンを押すと、配車(担当する車両のアサイン)が始まる。それに要する時間はおよそ1分程度で、配車が完了すると迎えに来るタクシー車両がどこから何分程度で到着するのか、担当ドライバー、車両ナンバーと共にアプリ上に表示された。その画面では、メッセージや電話でドライバーに連絡を取ることもできる。

 配車されたタクシーが到着すると、乗務員から名前を確認されて乗り込むだけ。アプリ上でタクシーの現在位置、車種(シルバー・トヨタコンフォートなど)、車両ナンバーが分かるので、乗務員より先にこちらが見つけて声をかけたほどだ。車内にはナビゲーション端末の横に、DiDiモビリティジャパンの車両管理コンソールが付いており、乗務員はその端末で目的地の確認や支払い手続きを行っていた。乗客が請求されるのは、迎車料金(310円)を加算した額で、アプリにクレジットカードを登録しておけばネット支払いが可能。利用後にメールで領収書が送られてくる。そして、降車後にアプリで乗車体験の評価を行う仕組みだ。

コンドルタクシーの車両が到着した
コンドルタクシーの車両が到着した
タクシー車内にはDiDiの端末(左)が配置されていた
タクシー車内にはDiDiの端末(左)が配置されていた

東京でも大々的にキャンペーンを展開?

 実際、ここまでの流れを住宅エリアの東京・用賀と、ビジネス街の虎ノ門で試してみた。まず、1月20日(日曜)の昼間に用賀でアプリを立ち上げると、周辺に2台の車両しかなかったが、翌21日(月曜)の昼間に虎ノ門で見ると、近くに10台の車両アイコンを確認できた。用賀駅前ではアプリでタクシー配車依頼をしてから約1分で配車が完了、その後8分ほどでコンドルタクシーの車両が到着。虎ノ門で使った際は配車完了から2分ほどで車両が迎えに来た。まだ利用者が少ないので当然だが、乗車までの流れはスムーズだった。

 こうしたDiDiアプリで実現されている機能は、ユーザー目線では特段目新しいものではなかった。都内では、Japan Taxiや、DeNAのMOVでもほぼ同じことができる。そればかりか、DiDiアプリでは降車場所を指定しても目安の料金が表示されず、「一般タクシーメーター料金」とあるだけ。対して、Japan TaxiやMOVは配車依頼前に料金を把握でき、お気に入りの参加タクシー会社を指定したり、登録したりすることも可能だ。

 ただ、一方でタクシー配車アプリの真価は、AI(人工知能)や機械学習によって移動データを分析することでタクシー利用の需要予測をし、それにより参加タクシー会社の実車率を上げることにある。この点は各社ブラックボックスに包まれているが、中国を中心に世界5億500万人以上、1日当たり3000万回のアプリ利用を誇るDiDiが、膨大な移動データ分析のノウハウに長けていることは想像に難くない。

DiDiアプリで配車されたタクシーの車内広告
DiDiアプリで配車されたタクシーの車内広告

 これまでDiDiは大阪で毎週金曜・土曜の初乗り無料(680円)、ハロウィーン期間中の料金50%オフなど、大々的なキャンペーンを繰り広げ、ユーザーの利用拡大を図ってきた。東京での正式サービス開始時も、同様の戦略を取るだろう。そうしてDiDiがユーザーを引き付け、参加タクシー会社の実車率に明らかな違いが現れたら……。19年は、巨大商圏・東京を舞台にしたタクシー配車アプリの熾烈な戦いが本格化する。

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