スマートフォンを活用した決済に、自走型ロボットを組み合わせることで商品の搬送も自動化した新型省人カフェが東京・神谷町に開業した。ロボットがエレベーターを動かし、高階層までコーヒーを届ける。同店は森トラストが実施する実証実験。2020年開業予定の新たな施設での本格稼働を見据え、半年間に渡り検証する。

森トラストは2019年1月7日から、スマートフォンで注文して、ロボット「Relay」がオフィスにコーヒーを届ける新型の省人店舗の実証実験を始めた
森トラストは2019年1月7日から、スマートフォンで注文して、ロボット「Relay」がオフィスにコーヒーを届ける新型の省人店舗の実証実験を始めた

 職場の座席でスマートフォンのアプリを立ち上げる。階下のカフェの商品を注文できるアプリだ。商品一覧から購入したい商品を選び、アプリに登録したクレジットカードで決済を完了する。会計の列に並ぶことなく、商品を注文できる。

 注文からおよそ5分が経つと、注文した端末に通知が届く。通知を確認した注文者がエレベーターホールに向かうと、1台の自走型ロボットが鎮座している。注文を受け、ロボットが搬送してきたのだ。注文者がロボットに備え付けられたタブレット端末を操作すると、機体の上部が開く。中に入れられた商品を受け取ると、タブレット端末にお礼が表示される。ロボットが商品を届けてくれるため、エレベーターに乗って商品を受け取りに行く必要はない。商品の受け取りが完了すると、ロボットは自らエレベーターを操作して戻っていった――。

ロボットは人を避けながら、目的地に向かって自動で商品を運ぶ

 不動産開発の森トラスト(東京・港)は19年1月7日から、アプリを活用したキャッシュレス注文とロボットによる搬送を組み合わせた省人店舗の実証実験を、東京・神谷町のオフィスビル「城山トラストタワー」で開始した。同ビルの1階に入居するカフェ「Cafe& Deli GGCo.(ジージーコー)」が実施店舗となる。実験の期間は約半年間で、オフィスが可動する平日のみの運営となる。ロボットはオフィスで働く勤務者と同じルートでコーヒーを届けるため、始業時間や昼食時といった混雑時は運用を避けている。

ロボット活用で他社と差異化

 実証実験では労働人口の減少対策と、オフィスの価値向上の可能性を探ることを主な目的として検証する。「テナントでは労働者を集めることが難しくなっている。今後、ロボットは警備なども含めて活用しなければならない。また、階下までコーヒーを取りに行く必要がなくなるなど、働くストレスを低減することで新たな価値を提供する」(社長室戦略本部イノベーション戦略室の木原圭一専門部長代理)。

 18年から相次ぎ、新たなオフィスビルが設立され、テナント獲得の競争激化が続く。18年には東京・目黒の駅前に開業した「目黒セントラルスクエア」にアマゾンジャパンが新たな拠点を設けた。19年には東京・渋谷の「渋谷ストリーム」にグーグルが移転予定だ。森トラストは、ロボットを活用した付加価値の提供で差異化を図り、テナント獲得につなげたい考え。

ロボットベンチャーに出資するワケ

 実証実験の参加者は城山トラストタワーの30階以上の高階層に勤める人の中から募った。当初は約50人が実験に参加する。ロボットの稼働状況などを鑑みながら、今後、参加者を増やしていくという。

 参加者にはQRコードが印刷されたカードを配布。自身のスマホでQRコードを読み込むことで、アプリが立ち上がり専用の商品一覧ページが表示される。注文を受け付けるアプリは、デジタル店舗開発支援のShowcase Gig(東京・港)が開発した。注文したい商品を選んで、アプリに登録したクレジットカードで決済を完了する。昨今、飲食店で導入が増えているアプリを活用したテーブル会計と同様の仕組みだ。実験開始当初はドリンク商品の一部のみ注文を受け付ける。実験が経過する中で軽食やポット入りのコーヒーなども注文できるようにしていく考えだ。

QRコードを読み込み、注文したい商品を選んで決済する
QRコードを読み込み、注文したい商品を選んで決済する
Relayの中に注文された商品を入れられる
Relayの中に注文された商品を入れられる

 注文情報がカフェに送られると、従業員がビルのエントランスで待機しているロボットを呼び寄せる。ロボットは、シリコンバレー発のロボットベンチャー企業サビオークの「Relay」を活用する。森トラストは18年9月にサビオークに出資している。同社にとって国外企業への投資は初めてのこと。サビオークと密に連携して、サービスの共同開発に取り組んでいく。本取り組みもその1つだ。

 カフェの従業員は注文を受けた商品をRelayの本体の中に入れ、注文者ごとに割り振られた番号を、Relayの本体のタブレット端末に入力する。この番号が対象フロアのエントランスとひも付けられている。ロボットにはセンサーとカメラが搭載されており、人を避けながらエレベーターに向かう。ロボットと自動扉やエレベーターが通信を行い、目的の階を設定して自動で乗り込む。

 「カメラを通じた画像解析でエレベーターが乗れる状況かどうかを自動で判断して、混雑している場合には次のエレベーターを待つ」(社長室戦略本部イノベーション戦略室の高木淳主幹)など、臨機応変な対応が可能だという。一定数の人が往来する状況でもおよそ5分で注文者が働くフロアのエントランスまでたどり着く。

 このように、高階層の勤務者は1階まで降りずともコーヒーを注文して受け取れるため高い利便性を提供できる。ただし、複数の注文が同時に寄せられた場合、都度、店舗まで商品を取りに戻る必要があり、搬送までに時間がかかる恐れもある。「どれぐらいの注文に対して、何台のRelayが必要になるかといった点についても検証する」(高木氏)。

 実証実験ではサービスの利用頻度や、待ち時間の低減、実証実験参加者への満足度調査などを行い、総合的に評価する。森トラストはこうした実験を複数の施設で実施した後に、20年春に東京都港区に開業予定の「東京ワールドゲート」を、ロボットを活用した省人化オフィスビルとして本格稼働させることを目指す。

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