若い世代、しかも男女両方に人気

 設立したばかりの闇に、最初に声をかけたのは夏季限定のお化け屋敷を開催しているMBS。15年に開催された「呪い指輪の家」で闇は、NTT西日本が開発した、端末を付けた人間の脈拍と移動速度を外部に通信する技術を「ビビり度診断」という演出に活用。さらにお化け屋敷内に3台のカメラを設置し、来場者が大きな声を上げたところの映像を自動で編集し、YouTubeにアップするシステムを作り上げた(「テレビ事業の弱点をカバー MBSが『ホラー』に投資したワケ」参照)。

 来場者は機器を装着してお化け屋敷を楽しんだ後、渡されたQRコードでインターネットにアクセス。すると自分がどれだけ怖がったかというビビり度が示され、さらに大きな声を上げて驚く自分の動画が再生される。自分が驚く姿をSNSで共有することで、お化け屋敷を出た後も仲間同士で楽しめる仕組みだ。

 ホラーが若者に刺さるコンテンツだということは、MBSがお化け屋敷の来場者に向けて行ったアンケートからも見えてくる。

 来場者の65%を10代と20代占め、40代以上は10%しかいない(16年の観客アンケートより)。さらに同じアンケートで男女比を見ると、男性46.2%、女性53.8%とほぼ同じ割合。若い世代に人気のあるアイドルやアニメなどでは、作品によって男女の比率が偏ることが多いが、ホラーは男女両方に人気がある。「ホラーはティーン、M1層、F1層に届く貴重なコンテンツ」とMBS事業部の荒井丈介マネージャーはホラーの魅力を語る。

ホラーはSNSで拡散されやすい

 SNSとの相性の良さもホラーの魅力だろう。衝撃的な動画は、その驚きを誰かと共有したくなるからだ。福岡県苅田町のタイヤ通販会社オートウェイが、13年に公開したウェブCM「雪道コワイ」は、スタッドレスタイヤを着けないで雪道を走る危険を訴えるのにホラーを利用した。SNSで多くの人に拡散され、海外ニュースにも取り上げられるほどの話題になった。

 若い世代を獲得するために、ホラー映画もSNSを積極的に利用している。18年9月に公開された『クワイエット・プレイス』は、ウェブ用にローカライズした15秒のCM素材、6秒のバンパー動画、SNS用素材を用意し、Twitterを中心にデジタルのPRに予算の多くを投じた。「ホラー映画の成功は、はまると爆発力が大きい若年層(ライト層)が来るかどうかがキーになる」(映画を配給した東和ピクチャーズの山本杏氏)からだ。「王道かつ新感覚な怖さで若年層が劇場に来てくれるポテンシャルがある映画だと感じたので、デジタルに注力した」という。狙い通り、クワイエット・プレイスは12月までに興行収入8億6000万円のヒット作となった。

 リゾート地での住み込み型アルバイト「リゾートバイト」に特化した求人サイトを運営するアプリ(東京・新宿)は、若い世代にリゾートバイトという存在を知ってもらうために、闇に仕事を依頼した。

 「今の若者はリゾートバイトという存在を知らない人も多いんです。彼らがアルバイトしようと思ったときに候補に思い浮かべてもらえるように、リゾートバイトの存在を知ってもらいたいと考えたのがきっかけでした」(企画を担当したアプリの東代亮プロダクト・マネージメント・オフィサー)

 自身がゲーム好きで、ホラーゲーム実況もよく見るという東代氏は、怖い話は話題性があり、ネットでバズるのではないかと考え、闇に企画を依頼した。その結果、生まれたのが、リゾートバイト紹介サイト「はたらくどっとこむ」のプロモーションとして制作された無料ホラーゲーム「サクヤサマ 呪われたリゾートバイト」だった。離島の温泉で働くことにした主人公が、眼をえぐられ殺された「サクヤサマ」という怨霊の呪いに巻き込まれていく。

リゾートバイトの認知を若者に広めるために制作した「サクヤサマ 呪われたリゾートバイト」。スマホで見つけたリゾートバイトで働き始めた主人公は、サクヤサマの呪いから逃れるため行動を起こすが……
リゾートバイトの認知を若者に広めるために制作した「サクヤサマ 呪われたリゾートバイト」。スマホで見つけたリゾートバイトで働き始めた主人公は、サクヤサマの呪いから逃れるため行動を起こすが……

 実際にプレーして驚くのは、ゲームが本当の恐怖体験だったことだ。「最初はハッピーエンドだったのですが、プレーしてみて、なんだか普通だなと思ったんです。インパクトがあったほうがリゾートバイトが記憶に残るし、話題にもなると考えました」と東代氏。狙い通り、「サクヤサマ」はネットで話題になり、YouTuberもゲーム実況で取り上げた。「“そんな求人、誰が行くかよ”という書き込みを見たときは、やったと思いました」と東代氏は笑う。ゲームがSNSで拡散されていると実感できたからだ。