仏ダッソー・システムズの「3D EXPERIENCE CATIA」がデザイナーの注目を集めている。建築家の隈研吾氏も採用している3D(3次元)設計システムだ。エンジニアだけでなく、デザイナーにもアイデアや発想の支援用に売り込んでいる。

仏ダッソー・システムズの「3D EXPERIENCE CATIA」は設計用だけでなく、アイデアや発想を支援することで新しいビジネスモデルの開発にもつなげるツールだ(画像提供/ダッソー・システムズ)
仏ダッソー・システムズの「3D EXPERIENCE CATIA」は設計用だけでなく、アイデアや発想を支援することで新しいビジネスモデルの開発にもつなげるツールだ(画像提供/ダッソー・システムズ)

 マテリアル(素材)を重視することで知られる世界的建築家の隈研吾氏。自然の素材は制限があるため、コンピューターの力を活用しないと、設計はできないと言い切る。これまでもさまざまな3D設計システムを活用してきた隈研吾建築都市設計事務所だが、データ容量が大きくなると動きが遅くなったり、データの精度が悪くなったりしたという。これでは、プロジェクトの規模が大きくなると使いにくくなる。

 そこで隈研吾建築都市設計事務所が目を付けた3D設計システムが、仏ダッソー・システムズのクラウド版「3D EXPERIENCE CATIA」だった。同プラットフォーム上で稼働する建築業界向けソリューションを導入することで、建築プロジェクトの進行中でもリアルタイムで、各スタッフが複雑なパラメーターを精度良く扱えるようにした。アイデアの着想から設計、変更といった一連のプロセスが「見える化」され、変更履歴も一元管理でき、後でデータを参照することもできる。隈氏の設計思想をナレッジとして共有できるため、設計品質の向上やプロジェクトの効率化も進んだという。

 クラウドツールとして評価する隈研吾建築都市設計事務所の他、従来の3D設計システムの「意味」を変えたものとして評価する声もある。伊ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授は、商品開発の視点から3D EXPERIENCE CATIAに注目している。同教授の著書「突破するデザイン」(日経BP社)は、世界のヒット商品やサービスの開発を分析し、最高のヒットをつくるための鉄則について述べている。その中で最も重視している点が、商品やサービスに対する「意味」を変えることで、新たな市場の開拓につなげることだという。実は、そうしたヒット商品の1つとして、3D EXPERIENCE CATIAを挙げている。

3D EXPERIENCE CATIAをデザイナーにアピールするため、世界的なデザインイベントである「ミラノサローネ」でハッカソンも行った(画像提供/ダッソー・システムズ)
3D EXPERIENCE CATIAをデザイナーにアピールするため、世界的なデザインイベントである「ミラノサローネ」でハッカソンも行った(画像提供/ダッソー・システムズ)

デザイナーも活用、3D設計システムの「意味」が変わる

 例えばスポーツシューズの設計で3D EXPERIENCE CATIAを使うと、2Dで描いたアイデアスケッチを瞬時に3D設計データに変換できるという。その逆も可能で、3D設計データから2Dのアイデアスケッチがすぐに出来上がる。色や素材、デザインから技術的に検証できる他、人体のデータベースから履き心地を確認することもできるという。ユーザーエクスペリエンスの「設計」につながるわけだ。多地点を結んだVR(仮想現実)によるデザインレビューも可能という。

 3D EXPERIENCE CATIAをデザイナーにアピールするため、2018年には世界的なデザインイベントである「ミラノサローネ」でハッカソンも行った。世界中から25人のデザイナーに集まってもらい、建築やモビリティーをテーマに、新しい作品を開発してもらった。日本でもクローズなイベントではあるが、同様なハッカソンを実施している。

 これまでの3D設計システムの「意味」は新しい商品を効率的に開発するためだった。しかし3D EXPERIENCE CATIAは新しいビジネスモデルを開発するためのツールにした。商品を設計するというより、コンセプトを創造することを狙った。開発プロセスの下流工程にいたデザイナーやエンジニアが開発プロセスの上流にあるコンセプト作りから参加できるようにしているという。

 「大手の自動車や航空機、消費財、時計関連などの業界でもデザインや意思決定のツールとして使われてきた。16年から3D EXPERIENCE CATIAのクラウド版サービスがスタートし、世界中で採用が加速している。クラウドのためインストールの手間やシステムのメンテンナスの手間が省ける。中小のユーザー企業でも使えるようになった。ユーザーエクスペリエンスの実現に向け、デザインの品質はもちろん創造性やイノベーションを支援するツールになる」とダッソー・システムズのザビエ・メルコニアンCATIA Design ポートフォリオ ディレクターは話す。

 単なる商品の開発ではなく、いま求められているのはユーザーエクスペリエンスだという。そこで今後は、シミュレーションにさらに力を入れる。解析することで、デザイナーのインスピレーションを支援できるようにする。これまで解析は主にエンジニアの領域だったが、デザイナーも簡単な操作で解析できるようになれば、さらなるデザインを創造しやすくなりそうだ。

ダッソー・システムズのザビエ・メルコニアンCATIA Design ポートフォリオ ディレクター。デザインやスタイリング分野のソフト業界で製品開発、プロダクトマネジメント、インダストリーマネジメントなどを歴任。2009年にCATIA  Designの担当として入社。ソリューションの戦略立案などを担当
ダッソー・システムズのザビエ・メルコニアンCATIA Design ポートフォリオ ディレクター。デザインやスタイリング分野のソフト業界で製品開発、プロダクトマネジメント、インダストリーマネジメントなどを歴任。2009年にCATIA Designの担当として入社。ソリューションの戦略立案などを担当
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