ワーナー ブラザース ジャパン(WBJ)が、日本の若手監督とWBJのプロデューサーを米国本社に送り、企画をプレゼンさせ、ハリウッドメジャーのスタジオ作品として製作して、世界市場へ進出をもくろむという新しいプログラムを始動させた。第1号として選んだのは、映画「ちはやふる」シリーズで知られる小泉徳宏監督だ。
WBJが2018年10月から始めたプログラムの名前は、「WB’S Young Artists and Creators’ Incubation Program」(WB YACIP)。プレゼンした企画を米国の本社が取り上げ、ブラッシュアップしたうえで実際に製作にゴーサインを出せば、日本発の企画が、日本の映画監督の手で、世界市場を見据えたスタジオ作品として実現することになる。日本映画では10億円の製作費をかければ大作だが、スタジオ作品の製作費は最低でも20億円程度で、モノによっては数百億円をかけることも珍しくない。実現すれば、日本の若手監督にとっては得がたい機会になる。
プログラムの最大の特徴は、ワーナー ブラザース本社の映画部門が直接コミットしていることだ。映画部門の製作をつかさどる責任者の1人、ニューラインシネマ社長兼チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)のリチャード・ブレナー氏が、全面的に関与し、自らもプレゼンに同席している。日本の才能ある監督から企画を募る企画はこれまでにもあったが、ハリウッドメジャーの映画部門のトップが直接関わる試みは前例がない。
このプログラムにのっとり、日本の若手監督の第1号としてWBJが選んだのは、映画「ちはやふる」シリーズ全3作を撮り、現在、38歳になる小泉徳宏氏。既に2018年10月下旬に渡米し、ワーナー ブラザースの本社で、ブレナー氏とブレナー氏が選んだ5人のプロデューサーに向かって、英語で企画をプレゼン済みだ。「本社からはかなり良い手応えが返ってきた」(WBJのローカルプロダクションを統括する池田宏之バイスプレジデント上席執行役員)といい、小泉氏がプレゼンした企画を軸にして、スタジオ作品として製作する方向で話が進んでいくことになりそうだ。
「硫黄島の手紙」などの流れを踏まえたWBJならではの取り組み
『硫黄島からの手紙』(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks LLC. All rights reserved
WBJは過去15年近く、日本法人が投資して映画やアニメ作品を製作するローカルプロダクション(自社製作)に力を注いできた。クリント・イーストウッド氏の企画からスタートした映画「硫黄島からの手紙」に参加して日本で興収約51億円を稼いだり、「るろうに剣心」シリーズ3作、「銀魂」シリーズ2作など日本で邦画大作を製作したりして、成功を収めてきた。
今回のプログラムは、こうした流れを踏まえ、日本発の企画を世界市場で流通させるための試みの一つという位置付け。今後も、WBJとしてその才能に期待する日本の若手監督を定期的に選び、WBJのプロデューサーとコンビを組ませて企画を考え、米国本社に送り込んでプレゼンする恒常的なプログラムに仕立てていく考えだ。誰を選ぶかについては、企画を広く募集する形ではなく、実績を踏まえて若手監督をWBJが指名し、了承を得たうえで企画を考えてもらう形を考えているという。