AI(人工知能)やIoTなどのテクノロジーを活用。2025年に15兆円の新市場を生み出すと期待されるスポーツ市場。政府、プロスポーツ関係者、ITベンダーなど、巨大な新市場を巡る国内外の最新動向を追う。
イノベーションと卓越性とで、私たちのコミュニティーを豊かなものにすることに貢献する――。こんな、大手IT企業もかくやという「ミッション」を掲げるのは、米メジャーリーグ・ベースボール(MLB)ナショナルリーグに所属する名門球団、サンフランシスコ・ジャイアンツだ。
球団副社長兼CIO(最高情報責任者)のビル・スクローフ氏は18年12月に開催された「Sport Innovation Summit Tokyo 2018」というイベントに参加。「イノベーションは私たちのコアバリューであり、競争優位の源泉でもある」と語った。
実際、球団の歴史は数々の「メジャーリーグ初」の取り組みで彩られている。例えば、本拠地である「AT&Tパークスタジアム」。米国のボールパークは州政府などの税金を投入して建設することが多いが、同スタジアムは大半の建設資金を民間調達して完成させた最初のケースだという。
シーズンチケットを持っている人が、球場に行かない日に、他の人に権利を販売する「ダブル・プレイ・チケット」という仕組みも、MLBがオンラインでチケットを二次流通させるシステムを導入する前に、いち早く実現していた。また米アップルの「Apple Pay」に、MLBで最初に対応した球団の1つでもある。「新しいことに取り組むことがジャイアンツのDNAに刻み込まれている」とスクローフ氏は胸を張る。
ファン、選手、ビジネスの3つをバランスさせることを意識している球団にとって、先進テクノロジーは野球ビジネスを成長させるのに欠かせないドライバーなのだ。
もう1つ、球団の先進性を示す事実は、04年にいち早くスタジアム内に121ものWi-Fiアクセスポイントを設置していたことだ。当時主流のコミュニケーションツールは「PDA」(携帯情報端末)。04年といえば、アップルCEOだった故スティーブ・ジョブズ氏が、初代iPhoneを発表する3年も前である。そんな時代に早くも、ネットワークを通じてファン同士がつながるコネクティビティ―の重要性を認識。多額の投資を決断していたのだ。
その後、iPhoneなどスマートフォンが人気を集めるのに従ってボールパーク内のアクセスポイントを増やしていき、「今では当時とは比べ物にならないくらい多くの人たちが(球場に)モバイルデバイスを持って観戦。球場にいるときも、そうでないときも、ソーシャルメディアでSFジャイアンツのことを話題にしている」(スクローフ氏)。
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