自動運転車は高利回りの“投資物件”に

日高: SBドライブが考える自動運転、無人運転のサービスイメージは、どのようなものですか。

佐治: 自動運転という言葉の通り「運転が自動になる」だけなので、サービスとして成り立たせるためには当面、「運転以外」のところを乗客や交通事業者に育ててもらう必要があります。皆さんのイメージと少し違うかもしれませんが、実はバスの自動走行設定や毎日の点検、車内清掃など、結局ものすごく人手がかかるのが今の自動運転。それでも、バス業界からは、一刻も早く実用化を求められています。それほど大型2種免許のドライバーが不足しているのです。

 また、バスの自動運転は、必ずしも無人運転から始まるわけではありません。というのも多くのバス事業者は、自動運転になったら車内に同乗する「車掌」を復活させたいと考えている。そのほうが、乗客に対して柔軟な対応ができるからです。現在は当たり前になっている「ワンマン」運行というのは、ドライバーが車掌の役割までこなすという意味で、考えてみるとドライバーにとっては大変な負荷ですよね。

 私は人間のドライバーが安全に運転できる限り、自動よりも手動のほうが乗客にとって温かみがあって良いと考えていますが、逆に、疲労がたまったり集中力が続きにくい路線では、自動運転を活用してもらいたい。乗客の少ない地方や郊外でも、深夜までバスが走っていれば、確実に便利ですので。

佐治氏は、「自動運転バスを気持ち良く利用できる時代にするには、乗客同士の助け合いも大事」と話す。画像はSBドライブの紹介動画「バスがまた、通るようになったから。

日高: 自動運転によるモビリティサービスを担うのは、既存のバス事業者だけでしょうか。

佐治: 新しい移動サービスを作るという意味では、プレーヤーは交通事業者だけではないかもしれません。現在でも「目的地」である飲食業、病院、スーパー、ホテル、アミューズメントパークなどが、移動手段までパッケージにして顧客に提供しているケースはありますよね。「目的」のために最初にハードルとなる「移動」を解決してしまえば集客増加につながるという発想や、移動中にもサービスの世界観を出したいというブランディングの発想だと思います。目的地に合わせた「こだわりの移動体験」は、こうしたサービス提供者から出てくるのが自然です。

 また、将来はわざわざ移動のためにルート検索すること自体が「不便」と感じる時がくるような気がします。私も乗り換え検索や地図アプリは重宝していますが、ユーザーの移動手段検索の方法も次第に変わっていくでしょう。考えてみれば、人間は誰かに会う、食事する、泊まる、買い物する、働くなどの用事に合わせて移動している場合がほとんど。ですから、将来はSNSや検索エンジンなどで目的ワードを検索すると、それに連動した移動手段までが一気通貫で案内される時代が、当たり前になるかもしれません。

日高: なるほど。私は、少し引いた立場で自動運転の社会的機能とはどんなものだろうと考えていました。初めは「自動運転=無人運転」というイメージが強くありました。バスやタクシー、レンタカー、カーシェアリングなど既存のモビリティサービスは、空車状態で人を乗せずに運行する場合や、借りた場所と返却希望場所が必ずしも一致しない場合があり、片方にニーズの偏りができます。それが無人の自動運転サービスに置き換われば、人件費がかからないぶんコスト的に有利ですし、任意の場所で乗り捨てても自動で空いているカーポートに戻ってくれるような運用も可能になります。そうすれば、ビジネスとして成り立つのではないかと考えていました。

佐治: その要素もあると思います。コストが下がれば、モビリティサービスの料金を乗客が負担することもなくなるかも知れません。先ほど話した通り、ショッピングモールなどでは買い物をしてもらう代わりにモビリティサービスを提供することも可能で、地域経済を回しやすくなる可能性があります。現状では駅周辺の商業施設にクルマで買い物に行くと、駐車場が満車で空きを探して周辺を走ることも多いと思います。つまり、満車になりやすい駐車場周辺にある店舗は機会損失をしているわけです。こうした店舗同士が費用を負担し合って、地域巡回バスサービスを支えるというモデルも成り立つでしょうね。

日高: 自動運転技術の使い方はさまざまありそうですね。そうなると、トヨタ自動車のe-Paletteのような人の移動や物流、生活サービスのオンデマンド提供などを想定した自動運転車両が必要だと思います。自動運転技術の導入に向けてハードとして見たときに、どんな要素があれば普及すると思いますか。

佐治: 自動運転車というハードが世の中に普及するには、価格と性能のバランスが大事です。乗客の全てのニーズに、技術だけで応えることは不可能でしょう。結局、性能面で不完全な部分は、人がオペレーションで補うしかない。その上で、自動運転車を活用してビジネスをしようとする人が、収益を確保できると思える価格が大事です。

 そもそも、自動運転の車両を保有する人と、運用・保守をしていく事業者は別である可能性もあります。例えば、バス会社が自動運転バスを保有せずにモビリティマネジメントや顧客サービスに力を注ぎ、一方で車両は投資物件として資産家やリース会社が保有するケースもあるのではないかと考えます。これは、不動産業界に似た構造です。自動運転車が利回りの良い投資物件であるためには、効率良く運用したり、質の高いサービスを提供したりするノウハウが大事になってきます。高いノウハウを持つ事業者が、コンビニなどのようにフランチャイズ展開する可能性も考えられるでしょう。

日高: 面白い考え方ですね。確かに自動運転サービスが、人手不足や少子高齢化などの社会問題を解決するだけの役割だと、社会実装は難しいかも知れません。日本は社会的な課題の“先進国”ではありますが、一方で世界的に見て恵まれた交通環境だと思います。そうすると、MaaSや自動運転サービスなど、新しい交通体系に移行しようというモチベーションが湧きにくい。なので、知恵を絞ってビジネスとして、新しいアイデアを生み出しながら進めていく必要があります。

 その観点で言えば、MaaSや自動運転サービスは、特に若い世代に対しては課題解決型だけではなく、ビジネスとして魅力があったり、近未来の姿を示すなど、もう少し先の未来を提示できると良いなと思います。20年後や30年後にどのような状態を作って事業をしているべきなのか、夢のある将来の構想を一緒に考えてもいいのではないでしょうか。

佐治: 同感です。今までは自動運転がテクノロジーのバズワード的に扱われてきましたが、すでに本質的な社会価値が語られ始める段階にきています。このような議論をいろんな人としていけると良いですね。

■修正履歴
上士幌町ふるさと納税について修正を加えました。[2018/12/19 13:00]

『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』
(日経BP)
2030年、世界で100兆円以上に達すると予測されるモビリティサービスの超有望市場「MaaS(Mobility as a Service、マース)」。交通サービス分野のパラダイムシフトにとどまらず、MaaSで実現する近未来のまちづくり、エネルギー業界から不動産・住宅、保険、観光、小売り・コンビニまで、MaaSの「先」にある全産業のビジネス変革を読み解く、日本で初めての本格的なMaaS解説書!
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  • 日時:2018年12月20日(木)16:00~19:00
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    ・トヨタ自動車 未来プロジェクト室 天野成章氏
    ・計量計画研究所 理事 企画戦略担当部長 牧村和彦氏
    ・MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐氏
  • 会場:AP東京八重洲(東京・京橋)
  • 主催:MaaS Tech Japan、LIGARE(自動車新聞社)
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