アスクルはBtoB向けECサイト「アスクル」に、シンガポールのAI(人工知能)ベンチャー、ViSENZEの画像認識サービスを導入。検索した商品が希望の商品と異なっていた場合や、欲しい商品の正式名が分からなかった場合などでも簡単に検索できるようにして、サイトの使い勝手を向上させた。アスクルは買いやすいというイメージをユーザーの間に定着させることを狙う。

スマートフォン版BtoB向けECサイト「アスクル」のトップページ
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 「ECサイトを検索して目当ての商品にたどり着いたと思ったが、本当に欲しい商品とは微妙に違っていた」

 「今使っている紙コップと同じ商品が欲しいのだが、商品名もどこで買ったかも分からないので探せない」

 「欲しい商品は頭に思い浮かぶのだが、名前が分からないので検索できない」……。

 企業の購買担当者がBtoB向けECサイトで欲しい商品を探そうとしたとき、このようなケースは実は頻繁に起きている。うまく検索できない場合、元に戻ってイチから検索し直すことを余儀なくされることも多く、担当者は時間ばかり取られてストレスがたまり、仕事の進行に影響が出てしまうようなことも珍しくない。

 アスクルはこの問題を、BtoB向けECサイト「アスクル」に、シンガポールに本社を置くAIベンチャー、ViSENZE(ビセンゼ)の画像認識サービスを導入することで解決を図った。

「この商品と似た商品」ボタンをクリックすると類似商品が表示される
「この商品と似た商品」ボタンをクリックすると類似商品が表示される

 製造するメーカーから取り寄せたり、自身で撮影したりして、主な商品の画像をまず用意。そのうえで、2018年8月末から、主な商品の詳細情報を示すページに「この商品画像と似た商品」ボタンを配置した。ユーザーがこのボタンをクリックすれば、蓄積された商品画像のデータをViSENZEのAIが解析し、色や形など、いくつかの観点から類似と言える商品の画像を、最大30個表示する。ユーザーが示された商品の中から目当ての商品に最も近い商品の画像をクリックしていくと、ViSENZEのAIがさらに最適と思われる商品の画像を表示していく。ユーザーはこうして、イチから検索し直すことをしなくても、目当ての商品にたどり着けるという仕組みだ。アスクルではこの検索サービスを「シミラー検索」と名付けている。

スマホで撮影した商品を「写真を使用」ボタンをタップしてアップロードすれば、当該商品を含めて最適と推定された商品が表示される
スマホで撮影した商品を「写真を使用」ボタンをタップしてアップロードすれば、当該商品を含めて最適と推定された商品が表示される

 18年11月からは、撮影した商品の写真から直接、商品を検索できる「画像検索」サービスも開始した。スマートフォンのサイト「アスクル」上に示された「画像から探す」マークをクリックしてから、内蔵カメラで商品そのものやカタログに掲載された商品写真を撮影し、サイトにアップロードすれば、同じくViSENZEのAIが蓄積された商品写真のデータを解析し、当該商品と判定した商品を含めてユーザーにとって最適と思われる商品をスマホのサイト上に示してくれる。

シミラー検索の利用回数は月間35万に

 8月末からスタートしたシミラー検索については、「平均して月間35万クリックほど利用されており、思っていたよりも利用頻度が多い」とアスクルBtoBイノベーション本部(兼)グロース事業本部の宮澤典友本部長は語る。アスクルでは現在、約580万SKU(商品)を取り扱っているが、そのうち「これまでユーザーからの引き合いの多い30万~35万SKUについては、商品写真を用意して今回の検索サービスに対応済み」(宮澤氏)。今後もユーザーの利用動向を見据えながら、対応SKUの数を増やしていく考えだ。

 ViSENZEの画像検索サービスは、ユニクロのBtoC向けECサイトや楽天のECサイトの一部で既に使用されているものの、BtoB向けECサイトに全面的に導入したのは、アスクルが初めてだ。アスクルが今回のような画像を手掛かりに検索できるサービスを全面的に導入した狙いは、「ECサイトとしての使い勝手を向上させ、アスクルは買いやすいというイメージをユーザーの間に定着させること」(宮澤氏)にある。

 例えば建設現場などで必要な資材が生じたとき、これまでは事務所に戻ってカタログをひっくり返し、商品名と商品番号などを確認してからWebサイト経由などで注文していた。画像検索サービスが実装されれば、補充したい商品をその場で撮影して検索し、特定してそのまま注文できる。「ある領域では使い勝手が劇的に向上する」(宮澤氏)わけだ。

 また、今回の画像検索サービスがユーザーの間に定着すれば、アスクルのスマホサイトでメーカーなど他社発行のカタログの商品写真を撮影し、検索することもできる。このため、長い目で見ればアスクルは、自社カタログの発行部数に無理にこだわる必要がなくなる。必要なユーザーに必要な数だけカタログを発行すればよくなり、コスト削減につながる可能性が高まるわけだ。

スペック比較表の自動表示サービスも導入

 さらにアスクルは12月12日から、購入頻度が高く、ユーザーが競合商品と比較しながら購入する傾向の強い一定数の商品については、ECサイト「アスクル」内で商品を検索し、詳細情報ページに飛ぶと、商品の詳細情報に加えて、類似の商品とのスペックを比較した表を自動的に表示するサービスも提供し始めた。こちらはViSENZEの画像検索サービスではなく、既にECサイトに実装済みのスペック検索の機能を利用する。

 具体的には、複数の項目(検索のための軸)のうち1つが当該商品と同じスペック値を持つ類似商品を、商品分類上の小カテゴリーの中から選んで最大3つまで表示するというものだ。「購入を決断する際、類似の商品と比較したいユーザーにとって、類似商品をわざわざ検索する手間が省ける」(宮澤氏)というわけだ。これにより、導入を進めてきたシミラー検索や画像検索と併せて、BtoB向けECサイトの使い勝手を向上させようというのだ。

特定の商品については、詳細情報と共に類似商品とのスペック比較表を自動表示する仕組みを導入
特定の商品については、詳細情報と共に類似商品とのスペック比較表を自動表示する仕組みを導入

 アスクルは20年までに、取り扱いSKUを現在の約580万から1500万に引き上げ、それでも現状と同じく、サイト訪問から15秒以内に購入を完了できるようにするという目標を掲げている。今回、導入したViSENZEの画像認識サービスや、類似商品とのスペック比較の表示サービスは、この目標を達成するための重要な機能という位置付け。今後は対応する商品の数を増やしつつ、ユーザーへの告知と普及に力を入れる腹づもりだ。

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