デジタルを組み合わせるとホラーは大きく広がる

 MBSと闇の関係は15年に遡る。設立したばかりの闇は、NTT西日本が開発した、端末を付けた人間の脈拍と移動速度を外部に通信する技術を「ビビり度診断」という演出に活用。さらにお化け屋敷内に3台のカメラを設置し、来場者が大きな声を上げたところの映像を自動で編集し、YouTubeにアップするシステムを作り上げた。来場者は機器を装着してお化け屋敷を楽しんだ後、渡されたQRコードでインターネットにアクセスする。すると自分がどれだけ怖がったかというビビり度が表示され、さらに大きな声を上げて驚く自分の動画が見られてSNSで共有できる仕組みだ。

闇が最初に関わった「呪い指輪の家」のビビリ度診断。左側がスマホで表示される画面で、ビビり度と動画が表示される。動画を共有することでSNSでの拡散を実現した
闇が最初に関わった「呪い指輪の家」のビビリ度診断。左側がスマホで表示される画面で、ビビり度と動画が表示される。動画を共有することでSNSでの拡散を実現した

 この演出は技術を開発したNTT西日本も驚かせた。「我々は技術からスタートするが、闇は技術をリアルに届けるノウハウを持っている。我々が思いも付かない顧客にリーチできた」(NTT西日本経営企画部の増田茂雄氏)

 お化け屋敷を出た後、みんなが自分たちの怖がる動画を見ながら盛り上がる様子を見た荒井氏は、このシステムがお化け屋敷の楽しみ方を大きく広げたことを実感したという。「ビビり度診断のおかげで、会場を出た後もお化け屋敷を楽しめるようになった」。さらに動画を共有できるので、お化け屋敷の楽しさをデジタルで広めることができた。「お化け屋敷はどれだけよく作っても、場所からは離れられない。デジタルを組み合わせることでホラーは大きく広がる」と荒井氏はホラーとデジタルの可能性について語る。

 闇を1号案件に選んだ理由についてMIDの日笠賢治社長は、「ホラーとテクノロジーの融合をテーマにした闇と組むことで、未来のテクノロジーを使って若い顧客を獲得するという路線がはっきりする」と強調する。「もちろん上の世代を無視するわけではないが、その世代とテレビは今もきちんとしたコミュニケーションが取れていると考えている。闇と組むことで、疎遠になっている若い人たちをターゲットとしたい」。

 闇には副社長として荒井氏も参加。お金だけでなく人も送り込み、両社の発展を図るという。

 「新会社の1号案件が『恐怖』というのはうちらしい」と日笠社長は笑う。

 MBSは1983年に『夜はクネクネ』という番組を製作した。タレントの原田伸郎たちが関西の街を歩き、出会った一般人と話をするという番組だ。今では当たり前のフォーマットだが、当時は「テレビなのに何てことをするんだ」という声が多かったという。「今は『えっ』と思うけど、将来は当たり前になっている。そんなテーマをMIDで見つけていきたい」と日笠社長は語る。

 MIDという社名は「イノベーションを加速する」「MBSと他の企業の中間に立つ」という意味があるそうだが、もう一つの込められた思いを日笠社長が教えてくれた。「DRIVEには井戸を掘るという意味がある。中国では井戸を掘る人が尊敬されたという。我々も井戸を掘る人でありたいという願いを込めて社名にDRIVEという言葉を使った」

 「ホラー」は、MIDが最初に掘り当てた水源になるか。そして次には何を見つけるのか。


 MBS以外にも、若い世代を取り入れるために「ホラー」を利用する企業が増えている。来週公開予定の後編では闇の事例を中心に、企業の「ホラー」活用を紹介する。