2018年11月5、6日に「Silicon Valley-New Japan Summit 2018」が米スタンフォード大学で開催された。シリコンバレーのスタートアップと日本企業をつなぐことを目的とした招待制のイベントだが、参加者の発言から、シリコンバレーに対する期待が変わりつつあることが感じられた。
Silicon Valley-New Japan Summitは、現地企業を取材するメディア「The SV Startups 100」とスタンフォード大学アジア太平洋研究所、一般社団法人 日本能率協会が運営する。今回が初開催ではないが、イベントでの発言などを聞くと最近のデザイン思考人気も影響し、シリコンバレーに対する期待が変わりつつあるようだ。単に先進的なIoTのトレンドを追うだけではなく、シリコンバレーに“溶け込む”ことで、イノベーションの実現に近づけようとしている。
音声翻訳デバイス「ポケトーク」を発売するソースネクストの松田憲幸社長はシリコンバレーに住居を移したという。「ここは世界中の大企業のCEOに会える場所だ。日本の経営トップはシリコンバレーに住むべき。ホテル滞在では分からないことがたくさんある」と同イベントの講演で語った。
大林組シリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリー副社長の佐藤寛人氏は、シリコンバレーは「半歩先の未来が体験できる場所」だと語った。当初はシリコンバレーのコミュニティーに入る手立てがなかったが、デザイン思考などの方法論を学びながら建設とIoTを実験するラボの設立にこぎ着けた。現在、スタートアップと連携したAR(拡張現実)利用のモニタリング技術を共同研究しているという。
コマツはドローンのソリューションを提供する米スカイキャッチと協業し、工事データから「現場を見える化」するシステムの開発に乗り出している。同社CTO室の冨樫良一プログラム・ディレクターによると、今後は調査・計測から設計、施工、維持保守に至るまで一貫して3Dデータを利用した「スマート・コンストラクション」につなげる考えという。富士フイルムは日欧と並び、シリコンバレーにも「オープンイノベーション ハブ」を設けた。「新たな顧客ニーズや社会課題を発見するための場所」と河島靖典プリンシパルは話す。既に20件のプロジェクトが生まれるなど、多くの成果を上げている。