日本デザイン振興会は2018年10月31日、2018年度グッドデザイン大賞を選出した。大賞に輝いたのは、貧困問題の解決に向けた寺の活動「おてらおやつクラブ」だ。その他、背景に社会問題が含まれ、その解決に寄与したデザインが多く選ばれた。

グッドデザイン大賞を受賞した「おてらおやつクラブ」の作品展示の様子。10月31日から11月4日まで、東京ミッドタウンで開催した「GOOD DESIGN EXHIBITION 2018」の会場で展示されていた。今年は神戸でも「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」が開催される。東京以外の展示は初。会期は11月23日から12月24日まで。場所は神戸ファッション美術館。入館料は1000円(一般向けの場合)
グッドデザイン大賞を受賞した「おてらおやつクラブ」の作品展示の様子。10月31日から11月4日まで、東京ミッドタウンで開催した「GOOD DESIGN EXHIBITION 2018」の会場で展示されていた。今年は神戸でも「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」が開催される。東京以外の展示は初。会期は11月23日から12月24日まで。場所は神戸ファッション美術館。入館料は1000円(一般向けの場合)

 グッドデザイン大賞に輝いたのは、貧困問題の解決に向けた寺の活動「おてらおやつクラブ」だ。寺に「おそなえ」される品を仏様からの「おさがり」として頂戴し、経済的に困難な家庭に「おすそ分け」する取り組みで、奈良県にある安養寺の住職、松島靖朗氏が立ち上げた。おてらおやつクラブの活動趣旨に賛同する全国の975寺院(18年10月現在)と、子どもや一人親家庭などを支援する各地域の団体をつなげ、お菓子や果物、食品や日用品などを届けているという。

 活動を始めたきっかけは、13年に大阪市で起こった母子餓死事件だった。「私たちの活動は新しい知識や物を用意する必要はなく、コストもかからない。お寺の『ある』と社会の『ない』を無理なくつなげる活動。日本では7人に1人、280万人の子どもが貧困状態にある。この受賞をきっかけに、多くの人たちが貧困問題に関心を持ち、当事者として活動するきっかけになればと思う」。松島氏は授賞式で、このように話した。

授賞式の模様。左より、2018年度グッドデザイン賞・審査副委員長の齋藤精一氏、同・審査委員長の柴田文江氏、大賞を受賞した「おてらおやつクラブ」代表理事の松島靖朗氏
授賞式の模様。左より、2018年度グッドデザイン賞・審査副委員長の齋藤精一氏、同・審査委員長の柴田文江氏、大賞を受賞した「おてらおやつクラブ」代表理事の松島靖朗氏
グッドデザイン大賞作品のロゴマーク。貧困問題解決に向けてのお寺の活動[おてらおやつクラブ]/特定非営利活動法人おてらおやつクラブ
グッドデザイン大賞作品のロゴマーク。貧困問題解決に向けてのお寺の活動[おてらおやつクラブ]/特定非営利活動法人おてらおやつクラブ

新しい時代の「美しさの定義」

 この他、19企業・団体などに同金賞を、12企業・団体などに同グッドフォーカス賞を授与した。18年度のグッドデザイン賞は、「美しさ」をテーマに選出したという。審査委員長を務めたデザインスタジオエスの柴田文江氏は、「大賞候補となったファイナリストの作品は、取り組みの背景にあるコンセプトの一貫性や志、プロセスなど、いろいろなところに美しさを見ることができた。色や形だけではない、新しい時代の美しさの定義を私自身も知ることができた」と振り返った。実際、本年度の大賞や金賞を受賞した作品の一部には共通点があった。それは見た目が美しいだけではなく、背景に社会問題が含まれ、その解決に寄与したデザインだったことだ。

 例えば金賞のうち1社には、台湾のGogoro Inc.(ゴゴロ)がある。電動スクーター「ゴゴロスマートスクーター」とバッテリー交換のシステム「ゴゴロエネルギーネットワーク」は、台湾のバイク事情と環境への配慮から誕生したものだ。電動バイクのニーズは高いが、充電に時間がかかり、充電できる場所も少ないといった課題を解決した。同じく金賞のHAGI STUDIOは、東京・谷中で開業しているホテル「hanare」で受賞した。これは街全体を一つの大きなホテルに見立て、地域と一体になって運営することが特徴。急増する宿泊施設が引き起こす地域住民との問題を解決しようとした。富士フイルムの「ポータブルX線撮影装置 FUJIFILM CALNEO Xair」は、超軽量のハンディースタイルの装置。背景には、高齢化社会の進展で増加が予測される在宅医療における課題への取り組みがあった。

 デザインの領域がモノからコトへ拡張していることは、デザイナーにとっては周知の事実。18年度のグッドデザイン賞は、拡張したデザインの美しさについて考え、世の中に提示する機会にもなったようだ。

 審査副委員長を務めたライゾマティクスの齋藤精一氏は、「仕組みや取り組み、触れるものすべてにデザインを施していくと、今年のテーマでもあった“美しさ”にたどり着くことが分かった。審査ではモノとコト、そのカテゴリーを取り払ってプレゼンを聞き、芯にある美しさを感じようと思った」と話す。

●ファイナリストに選出されたグッドデザイン金賞受賞作品
大賞はグッドデザイン金賞を受賞した19件のうち、大賞候補となったファイナリスト6件の中から選出された

Gogoro Energy and Transportation Platform[Gogoro Energy Network(GoStation/Gogoro SmartBatteries/Gogoro Control Center)+Gogoro Smartscooter(Gogoro 1 & 2 Series/Gogoro App/iQ System)]/Gogoro Inc.
Gogoro Energy and Transportation Platform[Gogoro Energy Network(GoStation/Gogoro SmartBatteries/Gogoro Control Center)+Gogoro Smartscooter(Gogoro 1 & 2 Series/Gogoro App/iQ System)]/Gogoro Inc.
宿泊施設[hanare]/HAGI STUDIO
宿泊施設[hanare]/HAGI STUDIO
ポータブルX線撮影装置 [FUJIFILM CALNEO Xair]/富士フイルム
ポータブルX線撮影装置 [FUJIFILM CALNEO Xair]/富士フイルム
エンタテインメントロボット[aibo]/ソニー
エンタテインメントロボット[aibo]/ソニー
駅前広場と道路空間からなる景観[丸の内駅前広場から行幸通りに繋がる景観]/東日本旅客鉄道、東京都
駅前広場と道路空間からなる景観[丸の内駅前広場から行幸通りに繋がる景観]/東日本旅客鉄道、東京都

(写真提供/日本デザイン振興会)