ターゲティングした訪日中国人観光客に対して、日本国内の在日中国人の口コミ情報などを広告コンテンツとして配信し、そこで取り上げられた商品やサービスの国内での購入を促すという新たなマーケティングサービスを、マーケティング支援企業のイーライフ(東京・渋谷)が日本企業を対象に提供し始めた。

イーライフのサービスを解説するWebサイト
イーライフのサービスを解説するWebサイト
[画像のクリックで拡大表示]

 サービス名は「#JAPANBuyBuyBuy#」。当面は、中国からの訪日観光客が確実に見込める時期に限定した、キャンペーン型のサービスとして提供する。中国が春節を迎える2019年2月に訪日を予定している中国人観光客向けにターゲティングした「2019年春節キャンペーン」が、その第1弾となる。

 イーライフは、消費者が商品やサービスを実際に“体験”することで購入やロイヤルティー向上につなげる「経験価値マーケティング」の手法を得意とするマーケティング支援企業。06年9月から、SNSなどを使って口コミを拡散・収集するプラットフォーム「buzzLife」を展開してきた。興味のある商品やサービスなどを発掘して、無償で投稿する「buzzリーダー」として同社に登録した会員は約55万人に達する。

在日中国人の口コミ情報を活用

 今回の新サービスは、このbuzzLifeの仕組みを活用する。まず、ある時期に訪日中国人観光客にアプローチしたい日本企業からイーライフが商品やサービスを預かり、それを100人超の在日中国人のbuzzリーダーに事前に提供する。実際に使ってもらった感想を、中国版Twitterといわれる「微博(ウェイボー)」に、「#JAPANBuyBuyBuy」(予定)のハッシュタグ付きで投稿してもらい、フォロワーへの拡散を図る。

 こうしてフォロワーから得られた投稿の中から、訪日中国人観光客に対して購入を促せそうな内容を選んで商品・ブランド別にまとめる。そしてこのまとめ記事を、訪日を検討していたり、実際に訪日したりした中国人観光客に対して、ターゲティングしたうえで広告コンテンツとして配信する。

 実際のターゲティングと広告コンテンツの配信は、微博やライドシェアアプリの「滴滴出行(ディディチューシン)」、百度(バイドゥ)が提供する中国最大の地図アプリ「百度地図」、中国最大のオンライン旅行会社「携程旅行(シートリップ)」などと提携する中国の大手DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)運営会社が担当する。

 具体的には、各種アプリやWebサイトでの行動データ、例えば日本の京都の情報を調べたり、携程旅行で実際に旅行を予約したりといった動きや、各種アプリから得る位置情報などのデータをDMP運営会社があらかじめ収集しておき、このデータとイーライフが顧客の要望に基づいて示す条件を照らし合わせて、訪日前あるいは訪日中の中国人をターゲティングして、SNS広告やアプリへのプッシュの形で広告コンテンツを配信する。

ネット広告の不正表示監視サービスを導入

 その際、中国では一般的な、「アドマスター」と呼ばれるネット広告の不正表示監視サービスを導入する。

 例えば広告主の依頼を受けた広告会社やDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)運営会社が、「依頼通り、10万インプレッションの広告露出を実現した」と広告主に報告したとしよう。しかし、同じく広告主の依頼を受けたアドマスター企業が、「調査の結果、実際は8万インプレッションしか広告露出がなかった」と報告することで、広告主は2万インプレッション分の広告費を余分に支払わずに済むという仕組み。広告主の要望に基づき、露出先のWebサイトやアプリが広告に適しているかどうかも調査・判定できるという。

 中国の広告会社でデジタル広告畑を歩いて実績を上げ、今年イーライフに入社した同社中国事業部のヘザー・フェン部長は、「アドマスターを導入すれば、起こりがちな不正を避け、無駄な広告費を使わずに済む」と強調する。

 さらに、2019年春節キャンペーンの一環として、桜が見ごろな春に再来日できる旅行プランなどを抽選でプレゼントする投稿キャンペーンも実施する。イーライフが発信した広告(コンテンツ)に触発されて実際に日本国内で商品やサービスを購入した中国人訪日観光客が、その商品やサービスの写真を撮影して指定のハッシュタグ付きで口コミと共にSNSに投稿することで、投稿キャンペーンに応募したことになる。

効果が見込めない企業・ブランドには提供しない

 もっとも、今回のサービスは、広告主はもちろんイーライフもコントロールできないSNS上の投稿を広告コンテンツとして利用するため、商品やサービスが、在日中国人buzzリーダーのフォロワーから支持されるものでなければ高い効果が見込めない。実際、イーライフでは、2019年春節キャンペーンについては11月21日から12月6日まで、企業・ブランドを募集する形を採る。興味を示した企業であっても、効果が見込めない商品やサービスの場合は、あえてサービスを提供しない方針だ。イーライフの豊島香執行役員は「5~10社でスタートすることを想定している」と語る。

 イーライフでは、クチコミの活用という他社がまねるのが難しいサービスを武器に、春節の時期に続いて、今後、春の花見の時期や夏休みの時期などに「#JAPANBuyBuyBuy#」を提供していく考えだ。