グーグルは2018年11月14日、音楽や映像を見放題のストリーミングサービス「YouTube Music」の国内展開を開始した。無料版と月額制の「YouTube Music Premium」を用意する。利用者が月間6000万人に達するYouTubeの参入で、国内音楽市場も一気にサブスクリプション型に移行しそうだ。

 これまで提供してきたストリーミング音楽配信サービス「Google Play Music」を統合し、「YouTube Musicに一本化する」(YouTube音楽部門プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ・ファウラ氏)方針だ。国内でも音楽配信サービス代わりの用途としてYouTubeが使われるケースは多い。「消費者からは、YouTubeというブランドに対する認知や期待が高い。YouTubeブランドでの展開にチャンスがあると判断した」とファウラ氏は言う。YouTubeの参入は、サブスクリプション型の音楽配信サービスの普及に一役を買いそうだ。

 YouTube Musicは一言で言えばGoogle Play Musicと、YouTubeを統合的に使えるサービス。「Spotify」や「Apple Music」といった「既存の音楽ストリーミングサービスと、YouTubeを並行利用している層が多い」(ファウラ氏)。これらを統合的に利用できるサービスを展開することで、競争優位性につながると判断して開発した。

 使い方は既存の音楽ストリーミングサービスと同様で、アーティスト名や曲名で検索して聴きたい曲を探す。このとき、検索結果として既存の楽曲の他、YouTube上に投稿されているミュージックビデオや第三者が投稿したライブ映像やカバー楽曲、リミックス楽曲なども検索できる。気に入った楽曲や映像はお気に入り登録することで、自身の「ライブラリ」から再生できるようになる。YouTubeならではの幅広いコンテンツを1つのアプリで楽しめる点が強みと言えよう。

時間帯や位置情報でパーソナライズ

 特に力を入れて開発したのがパーソナライズ機能だ。利用者の許諾を得たうえで、アプリから取得した位置情報やこれまでのYouTubeの利用履歴などを活用して、一人ひとりに合わせた楽曲やプレイリストを提案する。ホーム画面では過去の再生履歴からアーティストやアルバム、プレイリストが提案される。

 また、天気や位置情報、時間帯を加味した提案もする。例えば、晴れの休日に海沿いにいる場合には、そのシチュエーションに合ったプレイリストなどが推奨される。「同じ音楽でも仕事中に聴くのと、自宅で聴くのではイメージが異なる」(ファウラ氏)。データに基づくパーソナライゼーションは、グーグルが最も得意とする分野だ。

 プレーヤーにも特徴的な機能がある。オーディオと映像を切り替えられるのだ。例えばライブ映像の音楽だけを聴きたい場合は、オーディオバージョンに切り替えればパケット使用量も少なくて済む。閲覧できる動画は音楽関連動画に限る。また、第三者の投稿したリミックスやカバー楽曲の映像は、コンテンツホルダーが配信を許諾したもののみを対象とする。

 配信する楽曲数はGoogle Play Musicとほぼ同数になるという。これにYouTubeの動画が加わる。有料版の価格はAndroid版が月額980円(税込み)、iOS版は月額1280円(税込み)となる。他のアプリを使っている状態でも音楽を再生できる、バックグラウンド再生は有料版のみ対応する。この点で他の音楽ストリーミングサービスと異なり、無料版は移動中にSNSなどと並行利用するといった利用法には使いづらい面もある。

 Google Play Music Premiumの利用者はそのまま有料版を利用できる。将来的にサービスが移行することを見越して、Google Play Musicのプレイリストなどのデータを移行できる機能も提供する。

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