ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の石坂信也社長は、2019年中に米国進出を計画していると明かす。これまでGDOが培ってきたEC事業のノウハウと、18年6月に買収したIoTを活用した米ゴルフレッスン事業を展開するゴルフテックの持つ技術やデータを組み合わせた新しい業態を開発し、日米で展開する。

ゴルフダイジェスト・オンライン社長 石坂信也氏 1966年12月10日生まれ。成蹊大学卒。ハーバード大学MBA取得。三菱商事での勤務を経て独立。2000年5月にゴルフダイジェスト・オンラインを設立し、社長就任。04年東証マザーズを経て、15年9月に東証第一部に市場変更。 ゴルフポータルサイト「GDO」の月間訪問者数は722万人超、会員数は362万人を突破
ゴルフダイジェスト・オンライン社長 石坂信也氏 1966年12月10日生まれ。成蹊大学卒。ハーバード大学MBA取得。三菱商事での勤務を経て独立。2000年5月にゴルフダイジェスト・オンラインを設立し、社長就任。04年東証マザーズを経て、15年9月に東証第一部に市場変更。 ゴルフポータルサイト「GDO」の月間訪問者数は722万人超、会員数は362万人を突破

18年6月に米ゴルフレッスン会社のゴルフテックを子会社化しました。これまでGDOはゴルフ用品のEC、ゴルフ場予約サービスといったインターネット事業で成長してきました。ゴルフテックを子会社化し、リアルを強化する狙いを教えてください。

ゴルフテックの持つ、レッスン中の体の動きなどをIoT機器でデータ化する技術と取得したデータが、当社の考える次世代型店舗に欠かせないと判断したのが理由です。昨今、ゴルフ人口は減少傾向にあります。当社は長らくデジタルを起点とした事業を展開してきました。ゴルフというスポーツがリアルの場で楽しまれている以上、当社としてもリアルの接点をより強化する必要があると考えていました。

 では、どうリアルの接点を作るべきか。ゴルフ人口を増やし、活性化させるには腕前の上達が重要になります。デジタル技術を駆使したレッスンと組み合わせた新しい小売りの業態を模索するなかで、ゴルフテックは相性がぴったりでした。このレッスンを含む体験と小売りを組み合わせた業態が、GDOにとっての次世代型店舗となります。

 次世代型店舗では店頭在庫を置かず、レッスンなどの体験を通じて取得した顧客のデータに合わせて最適な商品を薦めてネットで購入してもらいます。そして、これまでの事業で培った物流網を使い店舗、自宅、ゴルフ場など好きなところで商品を受け取れるようにしていきます。限られた坪数で、しかも在庫の負担がないという体験型店舗が当社の新しい業態になると考えています。

 当社はこれまで6年間ライセンスビジネスとして、ゴルフテックブランドでレッスン事業を展開してきましたが、新しい業態開発をするうえで従来の業務提携という枠組みでは不十分と考えました。業務提携という形ではゴルフテックと当社の契約が終了した場合、会員データなどを精算する必要があるなどの課題から、本腰を入れた連携は難しかったからです。ですから関係性を強固なものとするために、子会社化を決めました。

 また、米国進出の足掛かりとしてもゴルフテックの持つ資産を活用できるとも考えています。

米国でも次世代店舗を19年に展開予定

ゴルフテックの資産を使い、どのように米国に進出しようと考えていますか。

日本では18年前にゼロからGDO事業を作り上げましたが、同じことを他国でやるには莫大な資金力が必要になる。そこでゴルフテックの持つ会員基盤を活用します。ゴルフテックの11万人の会員を中心とした、コアな層向けにEC事業を展開することは1つの方法だと考えています。会員に評価されるサービスがあれば、その11万人を軸に広めていくことができる可能性が高い。これなら、低い投資リスクで参入することができます。

 既存のゴルフテックのレッスン場でゴルフクラブのフィッティングサービスを提供し、後からオンラインで購入してもらう。そうしたサービスは米国にはありません。来年(19年)にはゴルフテックの基盤を生かしたEC事業の第一弾となるサービスを、米国向けに展開したいと考えています。

国内ではどのように連携を強化していくのでしょうか。

18年9月には羽田(羽田空港国内線の第1旅客ターミナル5階)に、ゴルフテックを導入した店舗では12カ所目となる「GDO Golfers LINKS HANEDA」をオープンしました。これまでゴルフテックの会員向け限定でゴルフクラブのフィッティングと販売サービスを提供していましたが、羽田店は誰でもフィッティングサービスを受けられます。ヘッドの角度、シャフトの長さや硬さなどを細かく顧客ごとに合わせて提案し、その数値を指定したものを店舗でオーダーして店舗や自宅で受け取れる。そんなサービスの提供店舗を広げていきます。

 また、これまで分かれていたゴルフテックとGDOの会員制度を統合して、一本化していきます。ゴルフテック入会時にはまずGDOの会員になっていただく。これによりゴルフテックとGDOのデータを統合的に分析できるようにします。ゴルフテックはレッスン中にモーションセンサーを使って、スイング中の身体の動きを数値化して、そのデータに基づいて一人ひとりにインストラクターが指導します。

「ゴルフレッスンと小売りを統合」GDO社長が明かす新ビジネス(画像)

 一方、GDOではECサイトやゴルフ場でプレーしたスコアを管理できるアプリなどを提供しています。これらのサービスから取得した購買履歴や、スコアの推移といったデータを会員IDにひも付けて保有しています。この2社のデータを統合的に分析することで、顧客ごとに適した商品やサービスを推薦するCRMの強化につながると考えています。例えば、ゴルフの上達に合わせて適したクラブを提案したり、スコアを参考にしてレッスンの指導をしたり、さまざまな面で新しい価値を生み出していくことができると考えています。

ロイヤルティープログラムを統合

 もちろん顧客にもメリットを提供します。GDOではサービスの利用金額や、商品の購入金額に応じてランクが上がり、特別価格で商品を購入できるといったお得なサービスを受けられるロイヤルティープログラムを提供しています。IDが統合されることで、ゴルフテックのレッスンもこのランクの上昇に反映されるようになります。相互利用することでより便利にサービスを利用できるようにしていきます。

 また、一部の練習場では、GDOのIDで利用すると練習データを蓄積できるサービスの実験も始めました。

それはどのような実験ですか。

横浜市のゴルフ練習場「横浜旭ファミリーゴルフ」で実施しているもので、米トップトレーサーの持つ打球を追跡して解析する技術を50打席に導入しました。このシステムを使うと自分の打球の推定飛距離を算出したり、打席に据え付けられたモニターに映し出した仮想のゴルフ場で、打球がどのような軌道を描いたのかを確認したりできます。練習場にいながらにして、さながらラウンドをしているようなゲーム感覚で練習を楽しむことができます。

 さらに利用者は打席に貼られたQRコードをスマートフォン向けのアプリで読み込み、GDOのIDでログインしてから利用すれば、その練習のデータを蓄積できます。次回、来場した際に同じIDでログインすれば過去のデータを参考にしながら練習をすることができます。この実験を基に、他の施設にも導入を進めていく方針です。そうしてオンラインのサービス利用データ、ゴルフテックのレッスンデータ、そして自主的な練習のデータを一元管理できる仕組みを提供し、蓄積したデータをマーケティング活動に活用していきたいと考えています。

(写真/ゴルフダイジェスト・オンライン)