自動化は推進するが無人店舗にはしない。だから「おもてなし」のあり方が課題になる。ローソンが「CEATEC JAPAN 2018」で発表した「未来のコンビニ」は、そんな問題を改めて浮き彫りにした。省人化に伴い人と人とのコミュニケーションの進め方、デザインの仕方が問われる。

ローソンは2018年10月16日から19日まで千葉県・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2018」に小売業として初めてブースを出展。ローソンが目指す「未来のコンビニ」を発表した。マイクロソフトなどが協力して開発した、商品に取り付けたRFIDタグを読み取ることでレジ打ちや金銭の受け渡しを不要にした「ウォークスルー決済」の購買体験が会場では大人気。長い行列を作って未来のコンビニを試していた。
ただしローソンが考える「未来のコンビニ」は無人店舗を目指しているのではなく、むしろお客とのコミュニケーションに注力した、「人」を大切にした店舗だという。店員の人手不足やレジ待ちの長い行列を解消すると期待されるセルフレジだが、一方で高齢者など店員とのふれあいを求めて来店するお客も少なくないからだ。特に地方などは、そうした傾向が強いという。
IoT化が進むからこそ、デザインの領域が重要になる
実際にセルフレジを導入する際も、急いでいるお客向けのセルフレジ用のレーンと店員が対応するレジのレーンとに分けてスタートするという。ロボットなども含めたIoTの導入は省力化には必須だが、浮いた時間や余裕を、お客への「おもてなし」にどう振り向けるかが改めて問われる。
「未来のコンビニ」では、「ウォークスルー決済」の他にローソンの制服を着た「バーチャルクルー」や「調理ロボット」、イートインコーナーで遠方の専門家とつながり、医療などさまざまなサービスを提供する「デジタルコンシェルジュ」といった仕掛けも用意。人と人というよりも、IoTを活用したさまざまな「おもてなし」が注目されていた。会場で人気だったのは「バーチャルクルー」で、画面上のアニメのクルーに話しかけて会話を楽しむ人も多かった。人と人とのコミュニケーションをどう打ち出していくか、IoTをどう適用していくのか、全体をどうデザインしていくかが今後の課題だろう。
ローソンはかつて「マチのほっとステーション」を掲げていたが、今では健康への取り組みやノウハウを生かした「マチの健康ステーション」を目指している。ロボットを使えば、お客の健康に留意した出来たてのおいしさを提供することが可能かもしれない。しかし、それだけで、お店に行くことの楽しさにつながるのだろうか。IoTだけでなく店員とのコミュニケーションも含めた魅力を打ち出し、高齢者をはじめとしたさまざまなお客の心の健康まで視野に入れなければ、「マチの健康ステーション」の実現は容易ではないだろう。






