日本のイノベーションに必須の構想力

 昨今、日本でもイノベーションが一種のブームとさえなっているが、その本質を理解しないまま海外企業のノウハウをまねたり、担当組織を設置してもイノベーションを起こし得るのかどうかは疑問であろう。

 では、企業のイノベーションに、ローマー理論は役立つだろうか。理論的には、より多くの人的資本を蓄積した国家がより成長するはずだが、日本は停滞している。あくまで私見だが、日本をローマー的視点から見ると以下のような指摘ができる。

ローマー理論から見た「日本企業の課題」
ローマー理論から見た「日本企業の課題」

 筆者はこういった状況を乗り越えるには、個と組織、そして国家の「構想力」が不可欠と考える。いわばビッグピクチャーを描く力だ。21世紀の社会にふさわしい都市構想、事業をリニアな価値連鎖ではなくエコシステム(生態系)として捉える観点、企業と大学と国家がより協調する基礎研究政策、構想を具現化するイノベーションのプロジェクトマネジメント方法論(目的工学)開発などが、イノベーションを起こすと考えている。

 企業においては知識創造を中核に据えた「イノベーション経営」と組織文化への転換を導く全員の構想力が必須だと思われる。

 リーマンショックから10年。日本企業の利益は横ばいのままだ。米国は大型投資や産業の主役交代、新規分野拡大で回復を果たし、中国はその米国をGDPで抜き去ろうとしている。成長の鍵はイノベーションなのだ。

 折しも、筆者が代表理事を務めている一般社団法人ジャパン・イノベーション・ネットワーク(JIN)では、イノベーション経営の国際的な標準化(ISO)活動に関わっている。その意味は、イノベーション経営に関する知識がグローバルに伝搬し、早晩いかなる国家や企業も実践できるようになるということである。つまり、「我が社はイノベーションには無関係だ」といった回避は許されなくなる。