米HPは2018年10月11日、本体部分を革で作ったノートパソコンの新製品「Spectre Folio(スペクトル フォリオ)」を発表した。アルミ製が主流のなかで異彩を放つ同製品は、ディオン・ワイズラーCEOの声によるデザイン部門の再編や、経営トップ直属の組織としたHPの新戦略から生まれた。日本でも10月26日に発表している。
パーソナル・システムズ部門グローバル・デザインのトップであるステイシー・ウルフ氏は、「これまでのノートパソコンに対する素材の常識を捉え直し、1日中使い続けるライフスタイルにふさわしいものとして、革を選択した」と言う。
ノートパソコンに革製のケースを付けることはあるが、革を外装に使う例は珍しい。実現するために、1枚仕立ての革のシートにマグネシウムとアルミニウムの板を張り合わせ、スクリーンやキーボードなどの要素を組み立てている。画面サイズは13インチで、色は茶とボルドーの2色。データ入力やエンターテインメント鑑賞などで形状を変えることができ、タブレットとしても使える。
使いやすさを強化するため、膝の上に置いた際のバランスにも気を使った。さらに背のヒンジ部分には空洞を設け、内部スピーカーの音響効果に役立つように設計している。
デザイン部門を再編し開発を主導
同社は2012年にデザイン部門を再編成。それまで各事業部に分散していたデザイナーを1カ所にまとめ、経営トップ直属の組織にした。これにより、エンジニア主導で作り上げられてきた製品が、デザイナー主導になったという。デザインを単に機能の一部として活用するのではなく、戦略の中核に位置付けるようになった。スペクトル フォリオは、そうした変化から出てきた製品だ。
革の質やエンボス加工、ステッチなどの仕上げにもこだわり、長く使える素材として扱うことに留意した。デザインの枠にとどまらず、ファッションの一部にもなりそうだ。
「これは新しい機会を探る試み。最新テクノロジーがファッションと同じ方向を向いている製品を作り、独自のアプローチを探求する初めての製品と言える」とウルフ氏。
革製品の歴史は長いが、それを最新テクノロジーと統合したことで、新しい視点が与えられた。「金属部分が見えなくなったことで、今までとは異なる新たなユーザー層が広がるのでは」とウルフ氏は期待する。
市場が成熟してきたノートパソコンのような製品は、これまでとは全く異なったデザインを与え、捉え直す時期が来ているのかもしれない。デザインを工夫すれば、新しい分野の開拓にもつながりそうだ。スペクトル フォリオの試みは、それを確認する機会になるだろう。
追加取材によりタイトルと本文を一部修正しました。[2018/11/08 20:30]