米HPは2018年10月11日、本体部分を革で作ったノートパソコンの新製品「Spectre Folio(スペクトル フォリオ)」を発表した。アルミ製が主流のなかで異彩を放つ同製品は、ディオン・ワイズラーCEOの声によるデザイン部門の再編や、経営トップ直属の組織としたHPの新戦略から生まれた。日本でも10月26日に発表している。

 パーソナル・システムズ部門グローバル・デザインのトップであるステイシー・ウルフ氏は、「これまでのノートパソコンに対する素材の常識を捉え直し、1日中使い続けるライフスタイルにふさわしいものとして、革を選択した」と言う。

「スペクトル フォリオ」は茶とボルドーの2色。データ入力用やエンターテインメント鑑賞、タブレットなど4通りに形状を変えられる。スタイラスペン付き。重量は3.28ポンド(約1.49kg)で、価格は1299ドルから。革といえども操作性や携帯性は従来品と変わりない。外装を触ると手になじむ感じだ。日本では2018年12月に発売予定で、価格は16万9800円から(税抜き)
「スペクトル フォリオ」は茶とボルドーの2色。データ入力用やエンターテインメント鑑賞、タブレットなど4通りに形状を変えられる。スタイラスペン付き。重量は3.28ポンド(約1.49kg)で、価格は1299ドルから。革といえども操作性や携帯性は従来品と変わりない。外装を触ると手になじむ感じだ。日本では2018年12月に発売予定で、価格は16万9800円から(税抜き)

 ノートパソコンに革製のケースを付けることはあるが、革を外装に使う例は珍しい。実現するために、1枚仕立ての革のシートにマグネシウムとアルミニウムの板を張り合わせ、スクリーンやキーボードなどの要素を組み立てている。画面サイズは13インチで、色は茶とボルドーの2色。データ入力やエンターテインメント鑑賞などで形状を変えることができ、タブレットとしても使える。

 使いやすさを強化するため、膝の上に置いた際のバランスにも気を使った。さらに背のヒンジ部分には空洞を設け、内部スピーカーの音響効果に役立つように設計している。

デザイン部門を再編し開発を主導

 同社は2012年にデザイン部門を再編成。それまで各事業部に分散していたデザイナーを1カ所にまとめ、経営トップ直属の組織にした。これにより、エンジニア主導で作り上げられてきた製品が、デザイナー主導になったという。デザインを単に機能の一部として活用するのではなく、戦略の中核に位置付けるようになった。スペクトル フォリオは、そうした変化から出てきた製品だ。

 革の質やエンボス加工、ステッチなどの仕上げにもこだわり、長く使える素材として扱うことに留意した。デザインの枠にとどまらず、ファッションの一部にもなりそうだ。

 「これは新しい機会を探る試み。最新テクノロジーがファッションと同じ方向を向いている製品を作り、独自のアプローチを探求する初めての製品と言える」とウルフ氏。

 革製品の歴史は長いが、それを最新テクノロジーと統合したことで、新しい視点が与えられた。「金属部分が見えなくなったことで、今までとは異なる新たなユーザー層が広がるのでは」とウルフ氏は期待する。

 市場が成熟してきたノートパソコンのような製品は、これまでとは全く異なったデザインを与え、捉え直す時期が来ているのかもしれない。デザインを工夫すれば、新しい分野の開拓にもつながりそうだ。スペクトル フォリオの試みは、それを確認する機会になるだろう。

1枚の革に精密加工を施したマグネシウムとアルミニウムの板を張り合わせて組み立てている
1枚の革に精密加工を施したマグネシウムとアルミニウムの板を張り合わせて組み立てている
ロンドンの発表会で説明するウルフ氏(左)と、パーソナル・システムズ部門コンシューマー・デザイン担当副社長のケヴィン・マッサロ氏
ロンドンの発表会で説明するウルフ氏(左)と、パーソナル・システムズ部門コンシューマー・デザイン担当副社長のケヴィン・マッサロ氏
■修正履歴
追加取材によりタイトルと本文を一部修正しました。[2018/11/08 20:30]
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