企業のAI(人工知能)活用意欲が高まり、開発を支援するスタートアップやベンチャー企業に依頼が殺到している。一方で、56.1%の支援企業が「本格契約前の試行であっても、稼働に応じた対価を支払ってほしい」と不満を持っている。日経クロストレンドが155社を対象にした調査から分かった。

 「AI活用を支援するスタートアップ・ベンチャー企業の実態調査」は、日本企業に対してAIのビジネス活用を支援できるスタートアップやベンチャー企業を対象に、2018年7月から9月にかけてアンケートを実施。17年調査より約50社多い、155社から有効回答を得た。

 AI案件が殺到する中で、開発案件の顧客や事業提携先としての大手企業に対して、どのような要望を抱いているかについて尋ねた。17年調査で最も多かった「課題をクリアにして相談してほしい」が次点となり、18年は「本格契約前の試行であっても、稼働に応じた対価を支払ってほしい」が前回比約3ポイント増の56.1%で1位となった。「意思決定者を明確にしてほしい」も同約5ポイント増と最も大きな伸びを示した。

●開発案件の顧客や事業提携先としての、大手企業への要望(各社3つまで選択)
●開発案件の顧客や事業提携先としての、大手企業への要望(各社3つまで選択)

 AI活用はビッグデータ活用の延長線上にあり、実際に経営効果が得られるかどうかの見極めが難しい。企業側がAI活用に必要なデータを整備していない場合も少なくない。こうした背景から、企業側が稼働に応じた対価の支払いに二の足を踏んでいるものと考えられる。

4分の1は試行から進まず

 AI関連ビジネスの状況について聞いたところ「発注量が多すぎてバックオーダーを抱えている」との回答は25.2%と前回比で約10ポイント減った。その一方で「発注が十分にあり対応できている」が36.8%と約6ポイント増えた。両方の回答をあわせると昨年に比べて実ビジネスに結びついている割合が62.0%と前回比で約4ポイント減となった。AI活用の支援に新たに乗り出すスタートアップやベンチャーが増えたのが背景にあるとみられる。一方で、PoC(概念実証)でとどまっているとの回答は、前回とほぼ同様の4分の1を占めている。

●AI関連ビジネスの状況
 ●AI関連ビジネスの状況

プロジェクト管理の人材が必要

 課題については、「AIに対応できる技術者の確保」は前回比で7ポイント減となり、「プロジェクトをマネジメントできる人材の確保」が約5ポイント増えた。技術者を課題とする回答が大幅に減った背景として、AI活用を支援するツールやサービスの普及がありそうだ。AIの機能を企業の情報システムに組み込む案件が増えているとみられ、大型かつ高度な案件をこなすマネジメントに長けた人材が求められている。

●課題(各社3つまで選択)
●課題(各社3つまで選択)

 AI活用の支援をするスタートアップやベンチャーが増えて、「注文がさばけない」という状況は多少緩和しているものの、大手企業が案件に対して稼働に応じた対価を支払っていないという課題が浮き彫りとなった。スタートアップやベンチャーは資金や人員が限られている。日本のAIの競争力を底上げするため、発注企業側の意識改革も求められる。

 調査結果や回答企業155社の詳細、各社が提供できるサービスや能力については、日経クロストレンドが発行する専門レポート『AI・IoT・ビッグデータ総覧2018-2019』(10月15日発行)に掲載する。