この自動運転バスを用いたMaaSトライアルは、当初の予想を大きく超える反響があった。実証実験を発表後、たった1日で一般ユーザー向けの予約は満席になり、期間中の自動運転バスの乗車人数は約500人に上ったという。なかには高齢者や子供連れのファミリーで実証実験に参加する姿も見られた。

 このトライアルを終えた小田急は、「ファックスやメールで申し込みを受け付けていた従来の自動運転バスの実証実験と異なり、アプリを活用したことで利用までのハードルを下げられたと実感している。超高齢化社会を迎えるに当たって、今後は高齢者の外出意欲を高める必要があり、それをMaaSの取り組みを進めることで少しでも解消できればと考えている」と話す。小田急は、今回のヴァル研究所とのMaaSトライアルで得た知見を基に、19年度内を目標に小田急版MaaSの具体的なサービスを発表したいとしている。

 また今回の実証実験で着目すべき点は、もう1つある。ヤフーがMaaSの表舞台に初めて名を連ねたことだ。Yahoo!乗換案内は、スマホアプリの月間アクティブユーザーが約1500万、1日のアクティブユーザーは約400万人に上る国内有数の経路検索サービス。他にもグループ内には地図情報からカーナビ、飲食店や宿泊先情報、天気、ニュース、決済まで、100以上のサービスがあり、非常に多くのユーザーを抱えている。経路検索を軸として、これらのサービスを統合していくことで、有力なMaaSプレーヤーに発展する可能性を秘める存在なのだ。

ヤフーはグループで実に多様なサービスを展開している(同社ホームページより)
ヤフーはグループで実に多様なサービスを展開している(同社ホームページより)

 実際、Yahoo!乗換案内を担当するヤフーメディアカンパニーの高橋壮一氏は、「MaaSのトレンドには、非常に高い関心を持っている」と話す。昨年まではクルマ業界での動きと見ていたが、今年に入って小田急や東日本旅客鉄道(JR東日本)といった国内の鉄道会社の取り組みが本格化。それ以前からも、ユーザーの移動に関する課題を解決するため、Yahoo!地図やYahoo!乗換案内、Yahoo!カーナビなどを通して、ドアtoドアの情報提供に長年取り組んできた実績がある。特に鉄道情報については充実してきているため、今後は鉄道駅などからのラストマイルの情報提供に力を入れる時期に差し掛かっているのだという。

 さらに高橋氏は、「ヤフーもMaaSと同じ考え方で、組織的に統合事業戦略を進めている。Yahoo!トラベルなどの旅行・宿泊予約サービスを持っているので、それらを経路検索サービスなどと連係させて、ユーザーのアクションを次のサービスへつなげることを目指している」と話す。データの活用を戦略の中心に据え、「出会う」「調べる」「買う」「支払う」「利用する」といった一連のユーザー行動を、モビリティサービスを組み合わせて実現する構えだ。今回のMaaSトライアルでは、アプリ上での決済機能までは提供できなかったが、「いずれ実装したい」(高橋氏)と意気込む。

ヤフーでYahoo!乗換案内を担当する高橋壮一氏(写真右)と、山浦優樹氏
ヤフーでYahoo!乗換案内を担当する高橋壮一氏(写真右)と、山浦優樹氏

 ただし、MaaSプレーヤーへの道のりは平たんではない。例えば、経路検索にラストマイルを担う交通サービスを加えるとしても課題は山積みだ。ヴァル研究所取締役の菊池宗史氏によると、「現状、路線バスのオープンデータ化は進みつつあるが、事業者が多いタクシーや新興の自転車シェアなどとのデータ連係はこれから交渉が必要」という状況。しかも、必要とされるラストマイルの交通サービスは自治体やエリア、人口密度などによって大きく異なる。これらをどのように取り込み、自社サービスと組み合わせてユーザーの利便性を最大化していくのか。ヤフーの今後の取り組みにも注目したい。