東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、競技会場や開催都市、各種施設などに施される装飾の他、競技備品・関連グッズなどのデザインのベースとなる「コアグラフィックス」を発表した。これらがデザインされた横断幕やパネル、バナーなどが各地に設置、掲揚されそうだ。
コアグラフィックスは東京オリンピック・パラリンピックを今までの大会と区別し、大会の個性を表現するための基本となるデザイン。国内および海外から来る選手や観客たちに、大会の楽しさやオリンピック・パラリンピックというスポーツの祭典が醸し出す興奮や個性を一貫性をもって伝え、盛り上げるためのもの。大会エンブレムや、大会エンブレムの組市松紋を構成する形の異なる3種類の四角形エレメント、大会の公式シンボルマーク、さらに「TOKYO2020」などのロゴと組み合わせることで、グラフィックスタンダード(基本的な装飾デザイン)にする。コアグラフィックスは2018年8月に発表された。
装飾を施す施設として考えられるのは、競技会場内外の他、羽田・成田両空港施設やJR・私鉄・地下鉄などの競技会場最寄り駅、競技場周辺、主要道路、ホテルなど宿泊施設、大型商業施設、公式ショップなど。グラフィックスタンダードがデザインされた横断幕やパネル、バナーなどが設置、掲揚されるものと同組織委員会は期待している。競技備品・関連グッズなどには、金銀銅の各メダルやメダル首掛けリボン、記念品、ボランティアスタッフのユニホーム、公式ライセンス商品などがある。これらのどこか一部にグラフィックスタンダードがデザインされることもありそうだ。
日本の伝統色の組み合わせ
コアグラフィックスをデザインしたのは同組織委員会ブランド開発部だ。「開発に当たっては放送、染色文化、都市景観美術などの専門家にアドバイスを受けた」(同組織委員会)という。
モチーフとして採用したのは「かさねの色目」と呼ばれるデザイン。これは、平安時代の十二単に代表される色の組み合わせ方の一つで、古来より祝い事やハレの日の女性の装束として用いられる。使用した色は、同じく平安時代から好まれてきた日本の伝統色である「藍」「紅」「桜」「藤」「松葉」の5色。「藍」は日本人に古くから親しまれてきた青色で、世界でも日本を表す色として広く知られている。大会エンブレムの色も藍色の一種だ。「紅」はやはり古来から祝い事などでよく使われてきた赤色で、これも日本を象徴する色といえる。「桜」は平安時代から日本人に広く親しまれているだけでなく、世界の人々からも知られている桜の花の色だ。「藤」は枕草子に登場するなど、古来より日本の美しい花として知られる藤の花の紫色である。「松葉」も枕草子に登場する縁起が良い樹として祝事に用いられる松の葉の色だという。
16年に開催されたリオデジャネイロ大会では明るいグリーンやブルー、イエローが使われた。12年のロンドン大会でも鮮やかなピンクやパープルだったことに比べると、「かさねの色目」を導入したためか、渋い色味に仕上がっているように見える。日本らしさを重視した色使いだが、これは大会の主役であるアスリートを引き立てるために、派手な色使いをあえて避けたためだという。
同組織委員会によると、組み合わせは未定だが、競技会場の装飾では例えば水泳会場が「藍」、陸上競技場は「紅」、柔道・空手会場の日本武道館は「桜」にするなど、競技ごとに色を分けて装飾を実施していく方針。
また、メダルやメダル首掛けリボン、記念品なども、コアグラフィックスをベースにデザイン開発していく考えだが、配色の仕方などについては確定していない。同じく公式ライセンス商品などについてもすべて未定という。
今後、コアグラフィックスの基本的な使用基準を定めたガイドラインを19年春ごろまでに作成し、都市などの装飾や競技備品などコアグラフィックスを用いるさまざまなアイテムのデザイン開発を進めていく。コアグラフィックスを展開させたデザインの装飾なども、大会の500日前となる19年春ごろに実装を行う予定だ。同時期に公式ライセンス商品の販売も展開していくという。
(画像提供/Tokyo 2020)