世界最大規模のデジタル決済サービス「アリペイ」を提供する中国アリババグループ傘下のアリペイ ジャパン(東京・中央)は2018年9月5日、東京国際フォーラムにて「ALIPAY DAY 2018」を開催。親会社のアント フィナンシャル サービスグループCEO(最高経営責任者)であるエリック・ジン氏は「アリペイが切り拓く新たな世界」と題した基調講演で、アリペイで中国以外のアジア各国のインバウンド消費も呼び込めると、日本企業へ熱く語りかけた。

中国ではQRコードによるモバイル決済が進み、キャッシュレス社会へと向かっている。その取引額は四半期ごとに40〜50%の伸び率を示し、17年第4四半期には、日本円に換算して約600兆円に達するなど、非常に早いスピードで成長を続けている。
拡大するアリペイの役割
その中で大きな役割を担っているのがアリペイだ。現金を持たずに、地下鉄やバスに乗れたり、レストランや屋台などでの支払いができたり、さらには病院での支払いもできるなど、さまざまな場面で使える状況となっている。また、こうしたビジネス向けだけではなく、最近では電気、水道、ガスなど、公共料金の支払いも可能となった。現在、中国国内では、約7億人のアクティブユーザーがいるという。
「ヒマラヤの麓の小さなお店でもアリペイで利用することが可能だ。地方に住む人も、北京や上海に住む人と同じようにデジタルプラットフォームを使って便利で簡便な金融サービスを受けられるようになってきた。地域の発展格差を埋めることができていると感じている」とエリック氏は語る。
また、韓国、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア、インドなどアジア各国への海外展開も積極的に行っている。現在、世界中で6000万の会社や店舗がアリペイを利用しており、27種類の通貨に対応しているという。
「今後は、中国だけでなく海外で私たちのアリペイのサービスを使っている人たちも日本にも呼び込めると計画している」と、エリック氏は日本企業へアピールした。
アリペイ導入店舗へのサービスも充実させている。データを匿名化した上で、どういった人が、どんなものを購入しているのかといった分析情報を提供する。これにより、より良い店舗運営が可能になるという。
店舗、旅行サイト、ショッピングモールを連携
アリババはさまざまなサービスを展開しており、それらを連携させることで大きな価値を提供しようとしている。例えば、傘下の旅行予約サイト「フリギー(Fliggy、旧称アリトリップ)」で旅行プランを予約する。旅行先に着くと、アプリから店舗情報や割引チケットなどを提供。旅行先の店舗でアリペイで決済すると、帰国後はアリババが運営するショッピングモールサイト「天猫(Tモール)」でまた優遇が受けられるなど、オンライン、オフライン問わずサービスを連携させることが可能だ。
「多様なチャネルを利用して、消費者とインタラクティブな関係を構築している」とエリック氏は話す。
詐欺の発生率は100万分の1以下
毎年11月11日の「独身の日」に開催される中国最大のセールイベント。17年は1日で11億件の取引が成立した。これを可能とするのは同社が持つ高い技術力だ。その日の取引で1秒間に処理したピーク件数は、25万6000件に及ぶ。独自に開発したクラウドデータベースは、毎秒4200万回の処理ができるという。
また、同社が持つ顔を認識して支払いを行う技術は他社と比べても精度が高く、写真や3Dシミュレートした顔画像などを使っても突破できないという。
最も重要視しているのがセキュリティー技術だ。現在稼働しているAI(人工知能)は自己学習を行い、全モデルのアルゴリズムを自らグレードアップすることが可能で、システム全体のモデル設計も自己完結することができるという。これらの技術により、支払い口座の取引が詐欺に遭う発生率は100万分の1以下と、信頼性の高いプラットフォームを構築しているとする。
さらには、お金を盗まれた場合に支払いを担保するという保険も提供し、消費者の信用を得ている。
「日本においては15年の最初の提携以来、目覚ましく発展を遂げている。パートナーの皆さんと一緒に協力関係を深め、消費者により良いサービスやキャッシュレスの体験を提供し、日本経済に貢献できればと考えている」とエリック氏は今後の期待を語った。
(写真/新関雅士)