楽天やリクルートが撤退した一方、ソフトバンクが2018年10月下旬から本格展開を予定するなど、まだ競争が激化する気配の駐車場シェアリング。そんななか、最大手のakippa(アキッパ)はどう動くのか。75万人に上る会員数を生かした個人間カーシェアの展開から、マルチモーダルのプラットフォーム構想まで、金谷元気社長が語った。

個人や法人の空き駐車場を、クルマを止めたいドライバーに貸し出せる駐車場シェアリングサービス。最大手のベンチャー、akippa(大阪市)は14年にサービスを始め、現在の累計拠点数は2万カ所を確保している。
このジャンルには、16年に時間貸し駐車場のタイムズ24(サービス名はB-Times)や、三井のリパークを展開する三井不動産リアルティ(同toppi!)などの大手企業が参戦。18年10月下旬からは、ソフトバンクも「BLUU Smart Parking」として本格展開を始める。一方で、17年に参入した楽天(楽天パーキング)や、リクルート(SUUMOドライブ)は、いずれも18年5月、6月に撤退を決めた。事業の両輪となる空き駐車場と利用者(ドライバー)を確保するのは、一筋縄ではいかない難しさがある。
そんな戦国時代に突入した駐車場シェアで先行するakippaは、18年5月に住友商事や日本郵政キャピタル、JR東日本スタートアップ、ニッポンレンタカーサービスなど7社から総額で8億1000万円の資金を調達。累計調達額は24億円に達しており、今後は既存の駐車場シェア事業の拡大とともに、あらゆるモビリティが一つのサービスとして連携し、人々の移動を自由で効率的なものにする「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」に向けた取り組みを進めるという。

空き駐車場の争奪戦が激化しているように見えますが、足元の状況は。
金谷元気氏(以下、金谷氏) 国内には3000万台分の空き駐車場があるといわれますが、そのうちakippaに登録されている空き駐車場は1%にも届いていません。現状でもまだ、駐車場や空き地を活用したいというニーズは多く、実際この4~5月は過去最大規模のペースで空き駐車場の登録が増えています。
マイカーを手放す人が増えているということか。
金谷氏 それもありますが、現状の貸し手は法人が大半で、個人が自宅の駐車場を貸し出すケースは新規登録ベースで1割程度の水準。法人では、例えばUR都市機構が管理するUR賃貸住宅の駐車場や、ニッポンレンタカーの営業拠点でクルマを貸し出している間の空いた駐車場など、活用事例が広がっています。
また、これまでは月極駐車場やコインパーキングなどの平置きの駐車場を中心に開拓してきましたが、5月からはオフィスビルや商業施設などの出入り口にゲートを設けている駐車場もakippaで貸し出せるよう「シェアゲート」というIoT機器を開発(セキュリティー専門メーカー、アートとの共同開発)。akippaアプリを利用するドライバーはシェアゲートに暗証番号を入力するか、Bluetooth接続することでゲートを開閉できる仕組みです。貸し手の駐車場オーナーにとっては、事前予約を取ったり、稼働率の低い時間帯の収益アップを狙ったりといったメリットがある。これによって、さらに駐車場の登録数を伸ばせるとみています。

空き駐車場の貸し手が増える一方で、借り手側はどうか。
金谷氏 現在の会員数は約75万人。ざっくり55万人ほどがマイカーの保有者で、後の20万人はカーシェアリングなどのユーザーです。いずれにしろ、自動車運転免許の保有者は8000万人規模いるので、まだakippaを活用している人は1%ほど。将来に向けて、これを10~15%程度の1000万人規模に拡大していきたい。このドライバーIDを握っていくことが、今後akippaがモビリティサービスのプラットフォームを目指す中で重要になります。
具体的には、どんな構想を持っているか。
金谷氏 最適なモビリティで、人と人が会いたいときに会える世界を作っていきたい。将来的にはakippaのIDでマイカーやカーシェア、鉄道などの公共交通、自転車シェアを含めて一括で予約決済し、誰もがスムーズに移動できるようなプラットフォームとなることをイメージしています。具体的な話はこれからですが、第1フェーズとしてはakippaのプラットフォームに複数のカーシェア事業者が参加し、空き駐車場とセットで予約できる環境をつくること。カーシェア事業者はシェアカーを配置する場所の確保に問題を抱えており、akippaはそこを補完できるので協力関係が築きやすい。実際、ニッポンレンタカーが展開をしているカーシェア事業との連携をこれから始める予定です。
一方、akippaとしても今後CtoC(個人間)のカーシェア事業を展開する可能性があります。マイカーを保有する55万人のakkipa会員は常にクルマを使っているわけではありません。その空き時間でクルマを所有していない残り20万人の会員に貸し出す仕組みで、例えばマイカー保有者にスマートキーデバイスを配れば、一気にCtoCのカーシェア市場で主導権を握れると考えています。
今後、高齢化やカーシェアの普及でマイカーを手放す人が多くなり、自動運転車が公共交通的な役割を果たすようになってきたとき、特に駅前など好立地の駐車場は別の用途に転用されるのでは?
金谷氏 実は、現状でも平置きの駐車場はあまり空いておらず、基本的にakippaに登録されている駅前などの駐車場の多くはビル内にあるので、ここは建物の規格上、他に転用されることが少ないはず。そこを多く押さえるためにも、先ほど説明したシェアゲートを開発したということです。
また、自動運転の時代になったとき、この空き駐車場が電気自動車の充電スポットとしても価値が出てくる。akippaのユーザーが、アプリで自動運転車を呼び出し、目的地まで快適に移動した後、お掃除ロボットのルンバのようにクルマだけが充電スポットとなる駐車場に戻るような運用も可能になるはずです。個人所有の自動運転車が普及するのは遠い将来かもしれませんが、自分が使わない間は自動運転車が他の人を乗せてお金を稼ぎ、保有コストを減らすといったCtoCカーシェアの発展形も考えられます。
移動を自由にするという目的であれば、必ずしもクルマにこだわる必要はないはず。
金谷氏 その通りですが、まだ鉄道会社などと具体的な話ができているわけではありません。しかし、現状でもakippaアプリではパーク&ライドを推奨していて、例えば東京ドームで人気のイベントが開催されるとします。その日はドーム周辺にあるakippaの登録駐車場はダイナミックプライシングで料金がアップするので、借り手のユーザーには1~2駅離れた割安に借りられる駐車場も案内するなど、鉄道への送客も行っています。公共交通を使ったほうが移動時間を短縮できたり、費用が安く済んだりするケースもあるので、連携は考えていきたい。また、駐車場から最終目的地への移動手段としては、最近盛り上がっている自転車シェアとの親和性も高いと考えています。
(写真/高山 透)