1人乗りマイカー通勤が減少し、都心回帰が実現

 今年の2月、17年の都心部の通勤交通に関する調査レポートがシアトル交通省から発表され、全米だけではなく、世界で話題となっている。2010年から17年のこの7年間で、1人乗りのマイカー通勤の割合が35.2%から25.4%へと約10%も大幅に減少したのだ。しかも、その間、都心部の従業者数は20万2000人から26万2000人と3割も増加している。これだけ短期間にマイカー通勤の割合が減少した都市は、先進国では聞いたことがない。

 17年の都心部への通勤時間帯の利用交通手段の構成を見ると、マイカー以外の利用が75%を占め、ライトレールやバスなどの公共交通が48%、カープールやバンプールなどを含む相乗り交通が10%、自転車が3%となっている。マイカーから公共交通やライドシェア、自転車に転換したと言っていいだろう。

 この間、南北幹線軸へのライトレールの新設、BRTの積極的な導入(18年6月時点で6系統)、ストリートカーの新設(2系統)など、シアトルでは次世代を担うさまざまな公共交通に対する先行投資が行われており、それが功を奏した結果でもあると筆者は捉えている。

 この現象をモビリティ革命前夜と捉えるのか、既に革命真っ只中と捉えるのか、読者の皆さんはどう判断するだろうか?

7年間で都心部への1人マイカー通勤が約10%減少した 出典:シアトルDOT
7年間で都心部への1人マイカー通勤が約10%減少した 出典:シアトルDOT
モビリティ革命により多様な手段で都心来訪を実現したシアトル(図は通勤時間帯の都心来訪の手段構成、2017年) 出典:シアトルDOT
モビリティ革命により多様な手段で都心来訪を実現したシアトル(図は通勤時間帯の都心来訪の手段構成、2017年) 出典:シアトルDOT

シアトルは「バス革命」の最先端都市

 世界各地で今、バス革命が起きている。ここシアトルはその最先端の都市といっても過言ではない。古くから大気汚染などの環境問題に配慮し、地形的な制約もあって電気駆動によるトロリーバスを多く採用している。最近では、2階建てバス、連節バスなど輸送力の向上を積極的に進めている。また、基幹的な交通網を形成するため、都心から放射方向に6系統のBRT(バス高速輸送システム)が、現在導入されている。

 シアトルのBRT(現地では、Rapid Rideと呼ぶ)の特徴は、市民に分かりやすいネットワーク構成、街路の一部をバス専用レーンに再編、車両デザインや停留所デザインの刷新、系統番号の見直し(普通の路線バスは数字表記、BRTはローマ字と赤丸表記で差別化してA~Fの番号を付与)、優先信号の導入などの総合的な施策として取り組まれている点である。BRTの導入によりマイカーに負けない移動時間と時間信頼性、移動の快適性が確保されている。これらが導入されたのは、たったこの10年での出来事である点は注目に値する。

 訪問時には、BRTのE系統に乗車する機会を得た。都心からシアトル北部の終点までの約25kmの区間は、全線バス専用レーンとして運用されており、ほとんどの信号交差点には止まることがなかった。バス車両の接近を前方の信号交差点が検知すると、前方の青信号の時間を延長し、赤信号の際には時間を短縮するといった信号優先制御が働いていた。これだけ大がかりなバス優先信号は、世界的にも希であろう。

シアトル市民の足となっているBRT。リフト付きの連節バスは全扉から乗降可能で、車両前方には自転車を搭載できる
シアトル市民の足となっているBRT。リフト付きの連節バスは全扉から乗降可能で、車両前方には自転車を搭載できる
通勤通学の足として人気の2階建て路線バス
通勤通学の足として人気の2階建て路線バス