多種多様なモビリティがうごめく都市、シアトル

 シアトルのタコマ国際空港に降り立ち、空港出口の案内板を見ると、多くの日本人は驚くのではないだろうか。ずらっと並んだ交通手段の多さもさることながら、見たことも聞いたこともない交通手段が表記されている。シアトル市内の主要地点やホテルへのシャトルバス、路線バス、タクシーなど、ここまでは日本人にもなじみのあるサービスだ。それ以外に、「バンプール」(シャトル・エクスプレスと呼ばれ、バンタイプの車両による相乗り送迎サービス)、「ライトレール」(米国ではLRTと呼ばれ、空港と市内中心部や大学などを直結している鉄軌道の輸送サービス)、UberやLyftに代表される「配車サービス」(案内板にはApp-Based Rideshareと表記)などがあり、さまざまな交通手段で空港出口は混沌としている。シアトルに着いた瞬間から、モビリティ革命の一端を垣間見ることができるだろう。

シアトル・タコマ国際空港の出口にある乗り継ぎ案内板。様々な交通手段が表記されており、モビリティの多様性を象徴するような光景
シアトル・タコマ国際空港の出口にある乗り継ぎ案内板。様々な交通手段が表記されており、モビリティの多様性を象徴するような光景

 ダウンタウン(都心部)では、地下にライトレールと路線バス(最初はバスのみのトンネルとして1990年に開業)が走行しており、地上では縦横無尽に走行する路線バス(2階建てバス、連節バス、トロリーバス、スペシャルトランスポート)、BRT(バス高速輸送システム)などが街の“動脈”となる幹線交通網を担い、「ストリートカー」(日本でいうところの路面電車、2系統)や、モノレールが特定地域の移動需要を支えている。また、カーシェアリング(例えば独BMWが運営する「ReachNow」は2016年4月からサービス開始)、自転車シェアリング(乗り捨て可能なタイプで3社が運営、約1万台を供給)、前述のバンプール(都市圏交通を担うMETROが運営)、配車サービスなどが都市の“静脈”として機能している。

 その混沌ぶりを理解するには、下の画面写真を見てほしい。自分の最寄り地点から利用できる交通手段と待ち時間を一覧で提供しているTransitScreen社の検索結果である。これを見るだけでも、実に多様な交通サービスが市内で提供されていることが分かるだろう。

シアトルのようにオープンデータの最先端都市では、最寄りの利用可能な交通手段と待ち時間がリアルタイムで提供される 出典:TransitScreen社
シアトルのようにオープンデータの最先端都市では、最寄りの利用可能な交通手段と待ち時間がリアルタイムで提供される 出典:TransitScreen社

 また、シアトルでは都市圏内の公共交通(フェリー含む)はゾーン運賃制となっている。日本人には聞き慣れない言葉かも知れないが、欧米では一般的な運賃制度である。シアトルのゾーン運賃制は、都市圏のゾーン内であればどの公共交通に何度乗り継いでも、2時間以内は運賃の割り増しがなく、一律で乗れる。

 さらに、運賃収受の仕組みも世界最先端を走っている。交通系ICカード「ORCA(オルカ)」を使うことでキャッシュレスを実現しており、モバイルアプリの「TransitGo」(キング郡交通局が提供)というサービスを使えば、チケットレスかつキャッシュレスで、都市圏内のどの公共交通もスマホ一つで利用可能である(スマホの画面にチケットが表示される仕組みで、不正防止のため背景に動画が流れる)。また、カーシェアリングやバイクシェアリング、配車サービスも、それぞれの運営主体が提供するスマホアプリ一つでキャッシュレスとチケットレスを実現している。