
「2017年5月にスマートフォン向けにGoogleアシスタントの提供を開始して約1年。Android 6.0への対応を実施した同年6月末時点から、現時点までにGoogleアシスタントを国内で使っている人は約5倍に増えた」。グーグルが18年6月5日に開催したGoogle アシスタント新機能記者説明会で、同社の製品開発本部長の徳生裕人氏はこう話した。
「日々使ってくださるユーザーが今も順調に増えていて、喜ばしく思う」と徳生氏は笑みを浮かべる。音声認識の評価が高いことに加えて、ユーザーの利用ケースに応える機能を追加し続けていることも利用増加を後押ししている。直近の数カ月でも、音楽を一定時間だけかける「スリープタイマー」、旅行計画を立てるときなどに「8月のパリの天気は」といった情報を確認できる機能、スマートスピーカーの「Google Home」からBluetoothスピーカーに音を飛ばして再生できるようにする機能などを追加している。
そうした機能拡張を実行する中で開かれた今回の新機能記者説明会の主なトピックは、Google アシスタントの利用をさらに加速させるための「家族」をキーワードにした機能追加である。
「Google Homeを17年10月に発売してから、分かったことの1つに家族に使ってもらっていることがある。家庭にGoogle Homeがあることで、お子さまやシニア層など、これまでスマートフォンを利用しにくかった人が、Google アシスタントを楽しんで使っている。今回は、家族みんなで楽しんでもらえるGoogle Homeを目指して、コンテンツの拡充を図った」(徳生氏)。
親子で楽しめる新機能として、サンリオのキャラクターと会話を楽しめる「ハローキティトーク」(サンリオウェーブ)、「シナモロールトーク」(同)、楽しく学べる「えいごであそぼ」(NHKエデュケーショナル)や「ディズニーマジカルえほん」(スマートエデュケーション)など、合計10の機能が加わった。発表会場にもハローキティとシナモロールの着ぐるみが登場し、ハローキティと会話を楽しめる様子や、シナモロールと一緒に歯磨きをする様子を照れる徳生氏と共に実演した。

家庭にGoogle Homeが入ることで、これまでスマートフォンを介してしかリーチできなかった子どもやシニア層にも、情報を届けたり、エンターテインメントの世界を提供したりすることが可能になる。さらに、今後数週間の内に、「Google Play ブックス」で購入したオーディオブックをGoogle Homeで再生する機能の提供も始める。これらはスマートスピーカーの利用の幅を少しずつ広げていくことにつながりそうだ。
ユーザーの意図から適切なアプリを選択
徳生氏は18年初頭から半年ほどの間に追加した、Google アシスタントの開発者向け機能についても説明した。代表的なものとして徳生氏は、「Implicit Invocation」「プッシュ通知」「Transaction API」の3つを紹介した。
Google アシスタントは基本的には、「OK Google シナモロール」ロールトークにつないで」とアプリを呼び出し、「さいきんハマっていることは?」といったアクションフレーズで情報を得たりする。Implicit Invocation は、明示的にアプリを起動する言葉を言わなくても、利用者が発したアクションフレーズからその意図を読み取ってアプリを提示するもの。
徳生氏は、例として「英語のリスニングを勉強したい」と指示することで、自動的に「Best Teacher」を提示する例を示した。今後こうした利用が広がれば、一般的な呼びかけに対して、自社のアプリが選ばれるようにする対策が開発企業にとって重要になる。
プッシュ通知は、サードパーティーのアプリからGoogleのアクションと同様にスマートフォンにプッシュ通知を届けられるもの。Transaction APIは、決済に限らずやり取りしながら処理を進めるようなアプリの一連の操作をGoogle アシスタント上で実現できるようにするAPI。デモではスマートフォン上のGoogle アシスタントから、飲食店情報サービスの「ぐるなび」で対話形式による予約実行の様子を示した。
「グーグルだけでユーザーが求める全ての機能を作ることは現実的ではない。外部の力を借りてアプリの充実を図る必要がある。そうした中で、これらの機能はグーグルが作ったサービスと区別なく、外部製のアプリを使えるようにするものとして提供している。より多くのデベロッパーが、ユーザーにとって便利なエクスペリエンスを提供できるようにしたい」(徳生氏)。
徳生氏は説明会の冒頭で「検索は20年をかけて築き上げてきた。アシスタントは第一歩を踏み出したところ」と語った。数々の機能拡充に加えて、最大の収益源である検索と対比していることは、グーグルが音声AIアシスタント市場の確立に本気で取り組んでいることをうかがわせる。