銀座の一等地に店を構える老舗文具店・伊東屋が5万人のフォロワーを抱えていた公式Facebookページ「伊東屋 Facebook」を5月16日に閉鎖した。フェイスブックによる個人情報の不正流出問題を受けての措置。その決断に賛成したり激励したりする意見、閉鎖を残念がる声などが多く寄せられたという。

シンボルマークの「レッドクリップ看板」で知られる銀座・伊東屋
シンボルマークの「レッドクリップ看板」で知られる銀座・伊東屋

 「正直なところ、ここまで反響があると思っていませんでした。決してフェイスブックに腹を立てているわけではありません。他の企業がこの動きに追随することも望みません」

 銀座の一等地に店を構える老舗文房具・画材用品店の伊東屋。その執行役員企画開発本部本部長の松井幹雄氏は、穏やかな表情でそう話す。

公式Facebookページを5月16日に閉鎖することを知らせる投稿
公式Facebookページを5月16日に閉鎖することを知らせる投稿

 同社は5月16日、5万人のフォロワーがいたFacebook公式ページを閉鎖した。その理由は、フェイスブックによる個人情報の不正流出問題である。4月10~11日にあったマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)の米公聴会出席は日本でも大きな話題になったが、その頃、松井氏を始めとする伊東屋の経営陣が集まる機会があり、公式Facebookページの取り扱いなどを協議。閉鎖を決定した。

 とはいえ閉鎖の「決め手」は公聴会でのやり取りではなかった。Facebookが全体的に“荒れた”状態になっていることを重く見たのだ。

 「私たちはFacebookページを大切なコミュニケーションの場、ネットに構えた(仮想の)店のようなものと捉えていた。しかしそのFacebookでフェイクニュースが急増していたり、個人データの不正流出などが指摘されたりした。フェイスブックのせいとは言い切れませんが、悪意を持つ人が好きなようにふるまえる場所は、店を出す場所として適切ではない。そこで、Facebookから出て行くことを決めた」

伊東屋にそぐわない場所に

 伊東屋は創業110年を迎えた2014年に、社員の気持ちを1つにするために『伊東屋らしさ』という小冊子を作っている。この中には伊東屋の使命、大切にしている価値観、目指す世界などを記載した。「毎日来ても心地よく、笑顔になれて、新しいインスピレーションを得られる店」が目指すところだという。つまりFacebookページは、こうした伊東屋らしさにそぐわない場所になったというわけだ。「もちろんフェイスブックは課題解決に向けて努力している。本当に安全になったと確認できたら、戻る可能性はある」(松井氏)。

 Facebookページは閉じたが「銀座・伊東屋」など14店舗がアカウントを持つTwitterと、Instagram公式アカウントなどでの情報発信は続ける。Twitterは各店主導で、店員の個性を前面に出す運用をしている。投稿に積極的な店舗は、売り上げに良い影響が出ているという。一方、2017年から始めたInstagramは一切宣伝色を出さない運用を心がけており、伊東屋として「良いと思うもの」を伝えている。Instagramはフェイスブックが提供しているサービスであることは理解しているが、Facebookと比べると「荒れていない」と考え運用を続けている。

 閉鎖する前のFacebookページでは、イベント告知や銀座の話題などを中心に顧客とのコミュニケーションを図っていた。「惜しい」と思う気持ちもあるが、告知情報などはTwitterを始め、代替のチャネルを確保できている。

 「私たちは(顧客が大切な時間を)『過ごす店』としての売り場作りを大事にしている。そんな伊東屋らしさを感じてもらい、商品を購入いただき、生活を豊かにしていだくのに役立つツールとして、ソーシャルメディアを活用していく」(松井氏)という。