ショッピングセンターやアウトレットモールなど大型商業施設のための専門展示会「MAPIC」。毎年フランスのカンヌで開催されるこの展示会が注目を集めている。
MAPICは、テナントを呼び込みたい商業施設のデベロッパー2500社と商業施設に出店したいリテーラー2100社、そして1000人以上の投資家が集まる、施設誘致のための展示会としては世界最大級のイベントだ。会場では、今後数年にわたるショッピングセンターの建設計画が模型とともに披露され、その場でデベロッパーと出展社とのマッチングが行われる。参加するのは、多くが企業の幹部やトップで、商業施設のこれからを占う場所といっていい。
これまではヨーロッパの商業施設を中心とした取引が多かったが、近年はアジアやアフリカの施設の商談が急速に増えている。日本からも、2017年は三井不動産やイオングループなどが出展し、海外のリテーラーの誘致を積極的に展開し始めている。
MAPICの展示会場内では商談の他、商業施設の運営に関するさまざまなセミナーやワークショップが開催される。例えば2017年は、顧客を呼び込んで滞留させるために「新たなユーザー体験」をどう創出するかをテーマに、議論が行われた。
欧州やロシア、アフリカ、そして中国など全世界で大型商業施設が次々に建てられ、そのマーケットは順調に伸びている。その一方で、インターネット通販の急成長は、リアルな店舗を抱える商業施設にとっては脅威となっている。家にいながらクリック一つで買い物ができるというオンラインショッピングの利便性に勝り、わざわざ足を運びたいと思わせる場とは何かを、商業施設のデベロッパーもテナント側も、共に模索している。
非小売テナントが賃料を上げる
こうした中で、商業施設のデベロッパーが力を入れているのが、食やエンターテインメントといったサービス業、クリニックや図書館、シェアスペースなど、非小売業のテナントの積極的な導入だ。
不動産関連のリサーチなどを行う米ULIと米JLLがMAPICの開催に合わせて共同で行った調査によると、上記のような非小売業のテナントの数を増やしたショッピングセンターは、それ以前と比較して来客数が7.24%増加。その後の空き店舗率も1%減少するという。結果的に、こうした施設はこれまでより高い賃料を取ることができるようになっているという。
食への関心の高まりから、MAPICで存在感を増しているのが、規模は小さいが新しい食の楽しみ方を提案するような飲食店や、それをプロデュースするデザインコンサルタントだ。例えばイタリアのラウレンツィ・コンサルティングは、書店と完全に融合したレストラン、ショッピングモールで購入した食材を調理してくれる料理店、パスタとソースをカクテルのシェーカーで混ぜて客の前でサーブするパスタ店など、食の新しい楽しみ方を広げる店舗開発事例とその企業を展示会の中で紹介。世界各国のデベロッパーの関心を集めていた。
2018年のMAPICは11月14日から16日まで開催される。食やエンターテインメントをショッピングセンターに取り込む動きは今後も続きそうだという。