英字フォントは点の直径と文字の太さを同じにすることで、ユニバーサルな印象に仕上げた。日本語フォントでは同じルールでは表現が難しかったため、二重線でカタカナを表現する方式を採用した
英字フォントは点の直径と文字の太さを同じにすることで、ユニバーサルな印象に仕上げた。日本語フォントでは同じルールでは表現が難しかったため、二重線でカタカナを表現する方式を採用した

 「Braille Neue」は、デザイナーの高橋鴻介氏が開発した「目でも指でも読むことができるフォント」。墨字部分と点字部分をうまく重ねることで、視覚的にも違和感なく読めるようにした。2018年3月の発表からおよそ2カ月の間に、その開発プロジェクトは世界各国のデザイナーを巻き込みつつあり、現在は社会実装に向けて進んでいる。

 高橋氏がこのフォントを制作したきっかけは、「点字を読んでいる人の姿に、シンプルに感動したから」だという。点をつなげば文字になるのではないかと考え、アルファベットから作り始めることにした。可読性を上げるためにはさまざまな苦労があったというが、完成したフォント画像を18年3月にツイッターに投稿したところ、予想以上に大きな反響があった。

 リツイートは5万を超え、情報は世界中に拡散された。国内外のウェブメディアがこのプロジェクトについての情報を掲載し始めた頃、「あいまいな情報が世界に拡散されてはいけない」と高橋氏は考え、1週間ほどでバイリンガルのウェブサイトを立ち上げた。

 すると、「同じようなプロジェクトを過去に行っていた」「自国語の『Braille Neue』を作ってみた」といった連絡が世界中のクリエイターから届くようになる。「驚いたのは、連絡をくれた人たちが皆、ポジティブだったこと。そこで、立ち上げたウェブサイトに彼らが制作したフォントも掲載し、皆で社会実装を目指すプロジェクトにシフトした。シンプルなアイデアなので、アイデア自体のオリジナリティーを主張するつもりはあまりない。ツイッターでの発信がきっかけでコミュニティーを立ち上げられたので、次は実際に使えるところまで進めたい」と高橋氏は話す。SNSでの速い情報拡散に的確に対応することで、国際的に発展したこのプロジェクト。現在はキリル文字や中国語も同じルールで開発が進んでいるという。

「Braille Neue」は既にイベントなどで使用されている。実際に使う場合は、墨字のデータと点字のデータの2種類を作り、それらを重ねて印刷する仕組みが必要になる
「Braille Neue」は既にイベントなどで使用されている。実際に使う場合は、墨字のデータと点字のデータの2種類を作り、それらを重ねて印刷する仕組みが必要になる
高橋鴻介(たかはし・こうすけ)氏
高橋鴻介(たかはし・こうすけ)氏
デザイナー
2016年慶應義塾大学環境情報学部卒業。専門分野はプロダクトデザイン。日常に浸透した文脈を応用し「新しい普通」となるデザインを模索している
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