通販企業と消費者向けに現金後払い決済サービスを提供するネットプロテクションズ(東京・中央)はQRコード決済サービス市場に参入すると発表した。通販で購入した商品の代金をまとめて翌月に支払うことができるサービス「atone(アトネ)」に、QRコード決済機能を追加し、今夏より実店舗で実証実験を開始する。QRコード決済サービスはIT企業、金融機関など多数の企業が参入を急いでおり、激しい競争が予測されている。

ネットプロテクションズが通販向けに提供する「NP後払い」は、購入代金を消費者に代わって同社が通販企業へ立て替え払いすることで、企業の未回収リスクをなくすものだ。消費者は商品が届いた後、コンビニで現金支払いをすればよいので、初めてのECサイトでも安心して購入できる。
atoneはその進化版で、会員登録することで後払い分を購入した都度ではなく、翌月にまとめて支払うことができる。購入額に応じたポイントも付与する。2017年6月よりECサイト向けに提供しており、利用が拡大しているという。今回、atoneにQRコード決済機能を追加し、実店舗で購入した商品のモバイル決済を可能にする。
現金派をモバイル決済市場へ
QRコード決済サービスは国内でも盛り上がりを見せつつある。大きく次の3つに分類される。口座から即時に引き落とされる「デビット型」、事前に入金する「デポジット型」、そしてクレジットカードの登録が必要な「クレジットカード型」だ。atoneはどれにも属さない「カードレス後払い型」であることが最大の特徴だ。
国内のモバイル決済の利用率は6%とまだ低い。ネットプロテクションズの独自調査では、実店舗で最もよく使う決済方法が現金である消費者は6割以上。クレジットカードやプリペイドカードへの抵抗感を持つ人も多いという。atoneはこうした現金派をモバイル決済市場に取り込むことを狙う。その結果、利用店舗の売り上げ向上が見込めるという。
月間取扱金額を12億円を目標
また、今回のatoneの店舗向け手数料は1.9%で、初期費用も月額固定費も無料だ。これらはまだテスト価格だが、本サービスでも業界最安値の手数料での提供を予定しているという。QRコード決済の手数料競争の激化が見込まれる。
「弊社がこの16年で築き上げてきた、累計1億4000万⼈のユーザー基盤と取引データ、185万⼈のポイント会員基盤、1万6500社の加盟店の基盤などの資産を活⽤することで、サービス品質と低料⾦を実現している」と、企画室マネージャーの杉⼭崇⽒は説明する。
19年3⽉までの今期、atone全体(ECも含む)の⽬標として、⽉間取扱⾦額を12億円、利⽤店舗数を500店舗、会員数を100万⼈を掲げる。すでにatoneとのシステム連携が進んでおり現状でも3万社は即利⽤可能で、⼤⼿の導⼊も多数決まっているという。さらに、後払いの年間ユニークユーザー1200万⼈にアプローチすることで、これらの⽬標は⼗分に達成可能だと⾒込む。
QRコード決済の普及で個人にひも付いた消費データが膨大に集まり、マーケティングが高度化することが期待されている。atoneの利用で集まる消費データをどのように活用していくのだろうか。
「主にユーザーに向けたサービス改善に使いたいと考えている。社会趨勢的にもデータの取り扱いはセンシティブになっており、慎重にやっていきたい。クレジットカードが拾えていない市場はまだまだたくさんある。新しい社会のインフラになっていくことを期待している」と、社長の柴田紳氏は今後の展望を語った。
