「データマーケター」と呼ぶ人材を地方の専門学校で育成する取り組みが始まった。いわゆるデータサイエンティストほど高度ではないが、実際のビジネスにビッグデータを利用したり事業企画を提案したりできる人材を育成する。この事業を推進しているビッグデータマーケティング教育推進協会(一般社団法人)は2018年5月10日に協会発足の発表会を実施。20年度には参加校を100校に増やし、データマーケター認定者1000人の輩出を目指すことを明らかにした。
同協会によると、将来的には専門学校生だけでなく、社会人向けの研修プログラムも検討していくという。学ぶ側は教材に使われる実際の購買ビッグデータに触れられるのがメリット。設立時に参加している専門学校は38校で、20年度には100校に増やす計画だ。

データサイエンティストとの違い
購買ビッグデータを手掛けるTrue Data(東京・港)の社長で、専務理事に就任した米倉裕之氏は、この発表会で、「データをマーケティングや実務で扱えるデータマーケターを大量に育成、輩出して地域の持つ課題を乗り越えていくのがミッション」と話した。
人材の不足が指摘されるデータサイエンティストは、主に大学や大学院が育成する高度なIT(情報技術)専門人材だ。一方データマーケターは、ビッグデータ分析の基礎知識を持ち、地域企業でマーケティング、販売、プロモーション戦略などの実務を通して企画提案できる人材と同協会は定義している。専門学校を教育の場とするのは「実務を習うための学校から育成したい」という思惑がある。

オープンデータやID-POSデータを利用
教材には、オープンデータや、小売店舗から集めるビッグデータであるID-POS(販売時点情報管理)データを使う。気象やSNS、政府統計などのデータも組み合わせて使う予定だ。他業種ビジネスのビッグデータを利用するかどうかについて米倉氏は「データは無償で入手できるものもある。一方有償データに購入資金がかかりすぎると教材の値段が上がるので、実際に(学校で)使われる様子を見ながらフェアに選定していきたい」とした。
同協会は6月にもカリキュラム開発に着手する。当初は90分×15コマ程度の初級レベルのカリキュラム構成を予定している。授業を進めながら内容を検証し、中級、上級の開発も行う。これから同協会内に教材開発のための分科会を作り、詳細を詰める。
2019年には参加校で授業を開始、20年にはデータマーケター認定制度の開始を予定する。認定制度の試験については、各学校で学生がカリキュラムを習得したかどうかの確認のため試験を行う必要から、それらをまとめて形にしたいとする。分析ツールなどは逐次新しくなるため、認定制度から得られる資格は一定の期間で更新することを予定している。授業料、認定制度の試験費用などは未定だ。
地方に活躍の場を広げる
同協会の幹部らが強調したのは「地域経済の活性化」。地方の高校・専門学校生や大学卒業生が大都市に職を求めて流出し、地方の労働人口の減少は深刻だ。

地方企業での活躍を期待してデータマーケターを育成しても、都市部の大企業へ流出する懸念はないのか。同協会の理事で、看護師と医療機関のマッチングサービスを提供する4U Lifecare(東京・港)の社長を務める伊藤久美氏は「データマーケターが地方で活躍できる土壌が広がれば、都市部へ人材が流れることはあっても、都市部から戻る機会も増えることにつながる」として今回の取り組みは有効だと述べた。
同協会は産学が連携する団体。現在参加する企業・団体会員は国民生活産業・消費者団体連合会、産業革新機構、プラネット、ニールセン カンパニー合同会社、デジタルガレージ、第一生命保険、True Data、ビーアライブ、ゼンリンジオインテリジェンス、プロレド・パートナーズ、CREMU DESIGNの11会員。アカデミック会員は21の都道府県で38の専門学校を運営する20の学校法人(表)。