『OKR―シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』発行記念イベントが2018年4月11日、代官山蔦屋書店にて開催された。OKRとは大胆な目標を達成するための手法のこと。グーグルをはじめとする米シリコンバレー企業が続々と採用する注目のフレームワークだ。

『OKR―シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』発行記念イベントに登壇した及川卓也氏
『OKR―シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』発行記念イベントに登壇した及川卓也氏

 イベントには、以前にはグーグルでWeb検索のプロダクトマネジメントなどに携わり、現在は独立して企業に技術戦略などのアドバイスを手掛ける及川卓也氏が登壇。グーグルでOKRを実践してきた経験を基に、その魅力を語った。なお、及川氏は書籍の解説を担当している。

 改めてOKRとは何か。成し遂げたい「O(Objectives:目標)」を立て、その実現のために何をするか「KR(Key Results:主要な結果)」を決めるという目標設定管理のフレームワークだ。同書では「数字にこだわらない人を鼓舞して動かすのがO。数字にこだわる人に対してOの現実味を示してくれるのがKRだ」と説明する。

 書籍で例示された、優れた生産者の茶葉を飲食店へ納めるベンチャー企業のOKRは次のようなものだ。

O:外食産業向け食品納入業者に対して、高級茶プロバイダーとしての明確な価値を確立する。
KR:再注文率70%
KR:再注文のうち50%はお客様自ら実行
KR:売り上げ25万ドル

 及川氏によると、このように数値で計測可能で途中経過が分かるようなKRは良い例だという。開発部署などでは「機能を実装する」などの数値で計測できないKRを立てることもあるが、これではできたかできなかったの判断しかできない。

 目標設定に不可欠な5要素といわれる「SMART」の概念を応用するのがKRを立てるコツだという。具体的に(Specific)、計測可能なもので(Measurable)、達成可能で(Attainable)、目標への関連性が高く(Relevant)、期限を明確にする(Time-bound)というものだ。

 1つのOに対してKRは3~5個設定するのがよいとされる。KRは数値で計測可能なものにすることが大切で、四半期などある期間ごとに達成度合いを確認する。あらかじめ「何をもって自分たちの目標を達成したとするのか」を決めることによって、ブレのない形で目標の設定管理ができるのがOKRのメリットだ。

上意下達ではOKRの魅力がなくなる

 ある程度大きな規模の企業のOKRは階層構造を持つ。一番上に全社OKRがあるとすると、そのKR部分をより抽象化した「O」が各部門に設定される。それを基に各部門で自分たちの「KR」を考える。このような構造をとることによって、全ての下位組織や個人が立てたOKRが達成されていくと、結果として会社全体が目指している目標へ貢献できているという形になるのが理想だ。

 「しかし、上意下達のようになってしまうとOKRの魅力がなくなってしまう。あくまで自分たちがワクワクするような目標を作り、そのKRを立てる必要がある。その上で、全社一丸となって同じ方向へ進むという形ができたらいいのだが、これがなかなか難しい」と及川氏は語る。

 いきなり全社でやるのが難しい場合は、まずは部門やプロジェクト単位で導入し、回るようになってきたところで全社へ導入するというやり方も考えられるという。

グーグルはOKR通じてコラボも

 OKRで大切なのは、自分の所属するチームのものは自分たちで考えるというところだ。人から与えられたものではなく自分自身のゴールとして仕事を捉えられることが、社員を鼓舞し、モチベーションを高める肝となる。しかも、自分のやっていることが、会社全体のゴールとどう結びついているのかが分かるというのもOKRの強みだろう。

 米グーグルでは社内ツールを使ってOKRを管理しているが、個人のOKRは全て公開されているという。社内ではSNS「Google+」が存分に活用されていて、意見交換をしているうちにお互いのOKRをチェックし、関係があればコラボレーションが進むというようなことがよくあるというのだ。

 「社内の情報共有が進んでいることと、OKRがうまくいくことの関連性はあると思う」と及川氏は言う。

OKRの導入に失敗はつきもの

 シンプルな構造のOKRだが、内容を考えるのは難しい。まず、達成可能だが難易度が高い目標を設定する必要がある。また、KRはその目標に関連が高く、数値で計測可能なものが望ましい。そして、OKRの定期的なレビューを、どう日常業務に組み込むかも課題となる。

 「OKRの導入時期には失敗はつきものだとよくいわれるが、失敗して悩んでみることが大切で、その学びを次につなげて徐々に定着していくようにすればいい」と及川氏。

 例えば、長期的にサービスを開発する部署は四半期ベースで計測可能なKRを考えるのは難しかったり、管理部門など全社OKRとの関連が薄い部署だと全社OKRと関連性のあるOKRを設定するのが難しかったりする。

 しかし、この悩みは無駄になるわけではない。OKRの導入が業務の見直しにつながる場合が多いという。続けてきたけれどやめてもいい業務、やり方を抜本的に変えるべき業務などが明確になってくるのだ。それが生産性を上げ、組織を強くしていくことになる。

OKRと人事評価は連動させない

 質疑応答では、 OKRと人事評価との関連をどう考えるべきかという点に注目が集まった。及川氏はKRの達成数値と人事評価を直接連動させてはいけないと強く主張する。

 人事評価と結びつくとなると、人は保守的な目標設定をするようになってしまう。KRの達成度が毎回100%だとすると、それは目標設定が甘いという判断になる。逆に達成度が低い場合は、その原因をレビューし、次の目標設定に反映させればいい。チャレンジングな目標設定をすることが大事で、人事評価制度は別に用意した方がいいというのだ。

 「ワクワク感を持って運用する、鼓舞する、エンゲージメントする。OKRをそういったものにするためには、表面的に導入するのではなく、文化として浸透させていくという意識が大切だ。本当の目的は何だろうとか、これを達成するためには何をやればいいのだろうということを、常に考えるためのツールだと捉えると面白いと思う」と及川氏は語り、イベントを締めくくった。