アクセンチュアは、「2018 デジタル消費者調査」の結果と日本の関連する分析を公表した。2018年のトレンドとして、「スマートスピーカーによる新しい体験」「オンデマンドの動画体験への期待」「自動運転に対する注目度の上昇」「拡張現実(AR)/仮想現実(VR)への高い関心」の4つを挙げた。

「2017年のデジタル消費者調査では、スマートフォン利用者の拡大をトレンドに掲げたが、今年はスマホの一部の利用法をスマートスピーカーが取っていくようになった。1年の変化は大きく、消費者が変化に速やかに適応していく状況が見て取れる」
こう話したのは、アクセンチュア 通信・メディア・ハイテク本部 通信・メディア統括 兼 経営コンサルティング統括 マネジング・ディレクターの金若秀樹氏。同氏は、この調査を通じて「消費者はリアルとデジタルがより融合した体験を望んでいる」という傾向を紹介した。
特にスマートスピーカーの新しい体験が、デジタル消費者に着実に浸透していることが調査から見えてきた。
調査は2011年から継続しているもので、今回は日本の1000人を含む世界19カ国の2万1000人を対象に実施した。今回の調査では、2017年にスマートスピーカーを所有していた人の割合(分母はインターネットに接続可能なオンライン人口)は、米国が21%、メキシコが15%、中国とインドが14%と上位に並んだ。日本は8%で西欧各国に近い水準であるという。
「『2018年に所有予定』を含むと、調査対象のほとんどの国で普及が急速に加速するとされる普及率の16%を超える。最近は10%前後から急速に普及率が上昇する傾向にあり、既に普及のしきい値を超えたと考えられる」(同社 戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク日本統括 マネジング・ディレクターの中村健太郎氏)。

日本におけるスマートスピーカーへの関心も若年層を中心に高く、スクリーンデバイスから音声の流れは無視できなくなるとアクセンチュアでは分析する。すでにスマートスピーカーを利用している日本のユーザーへの調査では、使用頻度は毎日が44%、週に数回が36%と約8割が日常的に使っていることが分かった。
また使用満足度も「とても満足している」(34%)と「満足している」(56%)を合計すると9割に上る。「デジタルガジェットの多くは購入からの時間とともに利用頻度が下がる傾向にあるが、スマートスピーカーは日常的に高い満足度をもって使われており、生活に音声が入っていく」(中村氏)とみる。
スマートスピーカー利用者の56%はスマホのWeb検索が減少
スマートスピーカーは、スマホと異なる用途でよく使われていることも分かってきた。音声エージェントならではの使い方として、「音声コンテンツ再生」「AIとの会話(自分自身とAI)」といった用途でよく使われているという。
音楽コンテンツの場合、スマホなどのスクリーンデバイスで楽曲を選択するときは、ジャンル、アーティスト、アルバムといった階層構造で選択しなければならない。一方、スマートスピーカーでは「90年代にヒットしたサザンの曲」といった指示で簡単に音楽を聴ける。
中村氏は「見るよりも話す方が、ユーザーの負荷が少ない」と分析する。またAIとの会話では、「あなたは誰」といった質問をしたり米アマゾン・ドット・コムのスマートスピーカーの「Amazon Echo」に「OK Google」などの他機種の起動用の言葉を話しかけたりして、遊んでいることも多いという。
既にデジタル消費者の行動が変わりつつある兆候も、2018 デジタル消費者調査から見えてきている。それが、「スマートスピーカー保有者の3分の2は、スマホの使用頻度が低下している」という結果である。
エンターテインメントサービスは64%の人が、オンラインショッピングは58%が、Web検索は56%がスマホの利用が低下したと回答。「これまでの調査でスマホの利用傾向が減ったのは初めてのこと。いくつかの用途の領域では、ユーザーにとってスマートスピーカーがスマホに代わるデジタル接点になる可能性がある」(中村氏)と、音声を使ったインターフェースが急速にデジタル消費者に浸透していることを示した。
