世界のミレニアル世代は、今……。若者研究の第一人者であるサイバーエージェント次世代生活研究所所長の原田曜平氏が、海外の若者にインタビュー調査を行う本連載。今回は平均世帯年収が実に2600万円に達するという、超リッチな中心都市ドバイを擁するアラブ首長国連邦(UAE)を訪れた。
2000年からの20年間で人口が53.5%も増加。平均年齢が27.94歳。ASEANより人口の増加率が高く若者も多い、今世界が注目するホットな消費エリアがMENA(中東・北アフリカ)です。その中でも特に注目の国が、域内経済をけん引するUAE(アラブ首長国連邦)。今回は、18年10月、中心都市のドバイに渡航して調査した現地のミレニアル世代に関するレポートです。
MENAは2020年に総人口が約4億7000万人になると見込まれ、ASEANの約7億人にはまだ及ばないものの、就労人口がピークに達する2030年まで伸び続ける点が大きなポイント。消費欲が旺盛な若いミレニアル世代が稼いだお金を商品やサービスの購入につぎ込み、消費の拡大基調がしばらく続くことが容易に予測されるからです。中でもUAEは、最も豊かな国の一つ。自国民の約9割が公的機関に勤める高給取りで、大学までの教育が無償のため教育水準が高く、ドバイやアブダビに進出する海外の有名大学の分校に通ったり、欧米の大学院に留学したりする若者も少なくありません。
ただし、注意が必要なのは、UAEを構成する7つの首長国のうち、稼ぎ頭は国内原油生産の9割を占めるアブダビであること。アブダビのGDPは国内の6割に上ります。一方、日本人に知名度が高く、在留邦人の大半が住むドバイは資源に乏しいことから、外資を呼び込むフリーゾーンの開設や大胆なインフラ整備、産業多角化を推し進め、非石油部門の育成に成功。GDPの3割を稼ぎ出しています。両首長国の人口はUAEの6割に達し、要するにアブダビとドバイに人、物、金が集中しているわけです。
もう一つは、人口約960万人のうち、生粋のUAE人は約1割だけで、残りの9割はインドなどから来た移民が占める“超移民国家”であること。つまり、高学歴、高収入の富裕層マーケティングの対象群はおよそ100万人になります。これを多いと見るか少ないと見るかは意見が分かれるところでしょう。ですが、ことドバイについては人口以上に魅力がある点もあります。それは、空の玄関であるドバイ国際空港が、世界一の旅客数を誇るハブ空港であること。その数は17年の実績で年間約8820万人に上ります。ドバイへの宿泊旅行者数も約1600万人。すなわち、ドバイで流行ったモノ・コトが旅行者を通じて全世界に発信されて、グローバルトレンドになる可能性を秘めているということです。
しかし、今のところ、進出が目立つ日系企業は、自動車メーカーや商社など。ドバイの街をタクシーで走ると、周囲のクルマが日本製であることに気づきますが、逆に言えば、それ以外は日本企業の存在感は希薄。90年代まで、MENAへの輸出額は中韓を上回っていましたが、2000年に中国、15年には韓国に抜かれています。アジアから来た私たちを見ると、中国語や韓国語で挨拶されるばかりで、現地の人からあまり日本語は聞かれませんでした。MENAやその中心地であるドバイへ、日本企業は出遅れているのが現状です。
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