イタリア外務・国際協力省が主催する「イタリアン・デザイン・デー」。2023年3月9日、イタリアを代表するインテリア雑誌「インテルニ(INTERNI)」編集長のジルダ・ボヤルディ氏が来日。プロダクトデザイナーの喜多俊之氏との公開対談会が実現した。

ジルダ・ボヤルディ氏(写真/行友重治)
(写真/行友重治)
Gilda Bojardi(ジルダ・ボヤルディ)氏
INTERNI編集長
1994年より、伊モンダドーリ・グループが発行するインテリアとコンテンポラリーデザインをテーマとした雑誌「INTERNI(インテルニ)」および同社の出版物すべての編集長を務める。デザインに関する国際展覧会のキュレーター(例:2006年に中国美術館、11年に中国国家博物館で文化部とともに2000平方メートルの展示)、および弁護士。1954年、イタリア初のインテリア雑誌として創刊されたインテルニは現在、デザイン、建築、装飾に関する国際的なコミュニケーションシステムの先駆けの一つであり、WebサイトやSNS(Twitter、Facebook、Instagram)などを利用したマルチメディアプラットフォームにも対応している

デザインアンバサダーが大阪を訪問

 イタリアン・デザイン・デーは、イタリアデザイン、および家具の世界的な普及を目的に2017年に始まった国際イベント。毎年3月9日に開催し、総務省文化庁や工業デザイン協会(ADI)などの機関と共通のテーマを設定。世界119カ国・地域に建築、デザイン分野の専門家を招き、講演、展示、コンペ、ワークショップなどを行ってきた。

 第7回目を迎えた23年、ミラノから大阪にジルダ・ボヤルディ氏を招き、喜多俊之氏との対談が実現。会場となったコンラッド大阪のボールルームで行われた公開対談会には、東京を拠点とする政府機関の関係者なども含む日伊のデザイン関係者200人以上の参加者があった。「デザイナーズトーク:ミラノから大阪へ、そして再びミラノへ─デザインの旅」と題した公開対談会は、第7回のテーマ「サステナビリティー」を軸に両氏による講演と対談の3部構成で行われた。

 ボヤルディ氏は、日本との縁が深いイタリアの建築家・デザイナーの話を皮切りに、写真を交えてこれまでの仕事を語った。「インテルニ」が「ミラノサローネ」と並ぶイベントとしての成長に寄与した「フォーリサローネ」、雑誌の企画で取材した世界の国、北京での大規模展示会、スペインの若いデザイナーとの取り組みについて語ると、改めてミラノの街に思いをはせた。

講演中のボヤルディ氏。東京を取材した号の「インテルニ」の話をしている(写真/行友重治)
講演中のボヤルディ氏。東京を取材した号の「インテルニ」の話をしている(写真/行友重治)

 喜多氏は、ボヤルディ氏も話題に挙げたリサイクルを話の軸に、日本の江戸時代がSDGs(持続可能な開発目標)を先取りしていたことを振り返った。美濃の和紙や箱根の寄せ木細工、輪島の漆塗りの産地の職人と協業したことや、和紙で作った照明器具がミラノの百貨店で成功を収めたことを例に挙げながら、職人が自然の原材料を探求して工芸品を制作する上で発揮していた精神が、次世代の商品開発においても大切なことを伝えた。

講演中の喜多俊之氏。スライドに展示されているのは竹の新素材を使った椅子。インテルニ20周年イベント「MATERIAL IMMATERIAL」で、「FLAT BAMBOO SHIMANE」と題した椅子やテーブルを出展した。喜多氏は、かつて伝統工芸に従事した職人たちが、自然の原料素材を探究し、その特性を最大限に生かし、何度もリサイクルして素材を使い切る手法を研究していたことに気づかされたことを強調。「現代を生きる研究者が新素材を開発するうえでも、彼らの培ってきた精神が求められている」と訴える。伝統を科学して、次の時代の暮らしの中でどのように使い、つないでいくか。未来をイメージしてデザインすることの大切さを伝えた(写真/行友重治)
講演中の喜多俊之氏。スライドに展示されているのは竹の新素材を使った椅子。インテルニ20周年イベント「MATERIAL IMMATERIAL」で、「FLAT BAMBOO SHIMANE」と題した椅子やテーブルを出展した。喜多氏は、かつて伝統工芸に従事した職人たちが、自然の原料素材を探究し、その特性を最大限に生かし、何度もリサイクルして素材を使い切る手法を研究していたことに気づかされたことを強調。「現代を生きる研究者が新素材を開発するうえでも、彼らの培ってきた精神が求められている」と訴える。伝統を科学して、次の時代の暮らしの中でどのように使い、つないでいくか。未来をイメージしてデザインすることの大切さを伝えた(写真/行友重治)
公開対談会で座っているのも、喜多氏自身が手がけた竹の椅子(写真/行友重治)
公開対談会で座っているのも、喜多氏自身が手がけた竹の椅子(写真/行友重治)

 ここではボヤルディ氏の講演と喜多氏との対談を紹介する。

この記事は会員限定(無料)です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
3
この記事をいいね!する