一過性の話題を超えて定着したかに見える「デザイン思考」。デザインのアプローチは、ビジネスにおいても社会課題に対しても効果を発揮できると言う。3年ぶりに来日した、デザイン思考の先導者でIDEOのco-Chair(共同会長)であるティム・ブラウン氏と、IDEO Tokyo共同代表・野々村健一氏の特別インタビュー前編。
IDEO 共同会長
IDEO Tokyo 共同代表
――複雑な社会課題が増える中、デザインの役割はどのように変わっていきますか?
ティム・ブラウン氏(以下、ブラウン) 15年ほど前から、デザインに求められることが大きく変わってきているのを感じます。この変化が新型コロナ禍によって、そして地球の気候変動問題によっても加速しています。
例えばIDEOではこれまでもたびたび、医療や教育の課題に取り組む機会に恵まれてきました。以前はその中で、患者や生徒にとってのユーザー経験をよりよくすることが関心の中心でした。
ユーザー経験も大事ですが、現在はそうしたサービスを提供すること自体を、「どのように実行するか」が問われています。例えば医療や教育の仕組みそのものをどのように機能させるか、ということです。その中でデザインは、課題解決の戦略的な部分に関与し、より大きな課題に取り組むことを迫られています。
求められているのは組織の行動を変えるデザイン
――デザインが、経営や組織により深く入り込んでいかなくてはならないということでしょうか?
ブラウン そうです。1つには、製品やサービスをつくり出す際に、デザインを考えるうえでCO₂排出削減や資源循環を強く意識するようになったことです。
もう1つは、すべての企業が、自分たちが気候変動に対してどう考え、振る舞うか、その姿勢を考え直さなくてはならなくなっていること。新しいマインドセットと文化をつくることも、デザインの課題になっているのです。
――製品やサービスだけでなく、それをつくり出す仕組みについても考えなければならないということですか?
ブラウン その通りです。デザインの戦略的役割、つまり組織に働きかけてその考え方を変え、全体としての大きな変化につなげることが求められているのです。これは気候変動問題だけでなく、ほかの課題に対しても同様です。
――実際に、デザインがどうやって組織の行動を変えるのですか?
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