2018年に誕生したベンチャー企業、イノベーションパートナーズ(東京・港)は、地域固有の価値を再定義し、各地の事業者とタッグを組んで独自の事業展開を行う。面白いのが「観光宿泊施設にオフィスを誘致し、人流とビジネスを根づかせる」事業だ。
イノベーションパートナーズ
代表取締役社長/CEO
――イノベーションパートナーズはどんな会社?
本田晋一郎氏(以下、本田) 2018年に地方創生に特化した企業として設立し、20年4月に日比谷花壇(東京・港)のグループ企業になりました。事業の成長・発展をサポートする「プロモーション」と「マーケティング」を軸にした地方創生事業を中心に、日比谷花壇のブランディング全般も担当しています。日比谷花壇は「指定管理者制度」の導入以来15年以上にわたって、全国各地の公園や植物館、地域交流施設などの公共施設の管理運営を受託し、地域の交流活性に取り組んできました。
私たちの事業の中でも特徴的なのが、地域の温泉旅館やリゾートホテル内に自社サテライトオフィスを開設し、地域に新しい人の流れを生み出すハブをつくるというもの。地域の事業者とも協働しながら「地域固有の価値」を再定義し、新たなビジネスや雇用を創出しています。20年に佐賀県嬉野市の「和多屋別荘」内の客室をリノベーションして自社のサテライトオフィスを開設。佐賀県内有田支社、多久支社に続き、22年11月に新潟県妙高市の「ロッテアライリゾート」内に開設したオフィスが4拠点目となりました。
「温泉オフィス」の効能は?
――なぜ旅館やホテルをサテライトオフィスに?
本田 コロナ禍で観光地の客足が途絶え、インバウンド需要や団体客需要に支えられていた多くの旅館やホテルが大打撃を受けました。私たちが最初に協業した和多屋別荘も、コロナ禍前後で客室稼働率が半分以下に下がったそうです。その客室をどうにか利用したいと考えたのがきっかけでした。私はコロナ禍前から和多屋別荘を利用していて、「この旅館の中にうちの会社があればいいのに」と思っていました。和多屋別荘は、70年以上続く老舗の温泉旅館。敷地面積は約2万坪で、趣のある広い庭や、地消地産にこだわった食事、美肌効果のある温泉などが特徴で、旅館内で生活のすべてが完結します。コロナ禍をきっかけに、以前から抱いていたこの構想を実現することにしました。
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