「Kimono Mom」として海外で絶大な人気を誇る日本人YouTuberをご存じだろうか。Kimono Mom・MOE氏のYouTubeチャンネルは、開始から約2年半で登録者が130万人を突破するほどに急成長している。「100万人の友達が世界にできた感じ」と語る彼女に、視聴者に寄り添う動画投稿の秘訣を聞いた。

MOE/Kimono Mom
YouTuber
1991年生まれ、京都府出身。高校生の課外授業で「舞妓(まいこ)・芸妓(げいこ)」について調べたことをきっかけに、高校を中退し舞妓・芸妓として6年間その世界に身を置く。結婚を機に引退、上京。海外生活も経験する。2020年2月にYouTubeで動画の投稿を開始し、チャンネル登録者数は137万人(22年11月7日時点)。

――海外の方々を中心に人気を博しているKimono MomことMOEさんですが、そもそもYouTubeを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

MOE氏(以下、MOE) 私の人生観として、結婚しても専業主婦にはなりたくないという思いがあり、出産してからはすぐ子どもを預けて働きたいと思っていました。しかし、当時住んでいた目黒区で待機児童の問題があり、保育園に子どもを預けられないことと、出産後体の調子が良くなく産後うつのようになってしまい、働くことが現実的ではありませんでした。

 とはいえ、赤ちゃんと2人きりの部屋でオムツを替えるだけの生活は、誰とも関わることや刺激がないため、気持ちがさらに落ち込んでしまって。そんなとき、Instagramに着物や着物を着たときのヘアアレンジ、Sutan(MOEさんのお子さんのニックネーム)との日々の様子を上げていたのですが、それを見たフィリピン系米国人のYouTuber・Paoloさんが声をかけてくれたのです。

 Paoloさんは「Paolo fromTOKYO」というチャンネルで活動しているYouTuberで、日本の生活や観光スポットなどを紹介しており、チャンネル登録者数は303万人に上ります(22年11月7日時点)。「Japan Day in the Life Series」という日本人の生活に密着する人気シリーズで、日本人ママと赤ちゃんの生活をテーマに取り上げてくれたのです。20年2月に投稿された「朝から晩まで完全密着!ママと赤ちゃんの1日」は、22年11月7日時点で1880万回再生を突破しています。

 密着してもらうまで私自身YouTubeを見る習慣がなく、動画を投稿することで生活している人(=YouTuber)がいることを知りました。直感的に赤ちゃんのお世話をしながら、私のペースでお金を生み出していけるかもしれないと思い、Paoloさんが密着してくれた次の日から構想を練り、1週間後には自分のiPhoneで動画撮影を始めました。

――動画投稿を始めてからどのように登録者数は伸びていったのでしょうか。

MOE Paoloさんの動画で私のことを知り、検索で私のチャンネルにたどり着いてくれた方が多く、最初の動画を出してすぐ約2万人の方がチャンネル登録してくれました。この2万人の方々は海外の方がほとんどでした。

 初めは1週間に1回ほど、日本の家庭料理を作る「料理ショー」を投稿していました。アシスタントとしてSutanも出演しており、普段の夕食を作る過程を動画にしました。

 登録者数が大きく伸びたきっかけは、登録者10万人記念で撮った「Mom’s life in Japan」という私の何の変哲もない1日を記録したVlog(ブイログ、ビデオブログの略)です。22年11月7日時点で、1297万回以上再生されました。

Vlog「Mom's life in Japan」は、Kimono Momチャンネルの中でも特に人気を誇る。MOEさんとSutanの他愛ないやりとりがほっこりする
Vlog「Mom's life in Japan」は、Kimono Momチャンネルの中でも特に人気を誇る。MOEさんとSutanの他愛ないやりとりがほっこりする

 この動画が伸びて思ったのは、国によって子育ての大変さは変わらないということ。各国の居住スタイルや食べ物、生活様式、文化は全く異なりますが、夜泣きやご飯を食べることを嫌がるなど、赤ちゃんがすることって全世界共通なのです。子育てするママは全員悩んでいて、私自身これを発信することでとても救われた部分がありました。

 夜泣きがつらいと動画でつぶやいたらブラジルの視聴者が共感してくれたり、コメント欄で視聴者同士が子育ての悩みから交流し合っていたり。母親や子育ての悩みってインターナショナルな、世界共通のことだと感じました。

 ここからぐっと登録者数が伸び、チャンネル開設から1年で80万人、21年夏には100万人登録を達成しました。現在は190カ国以上の人が見てくれていて、米国やインドネシアが特に多いです。

2020年2月に開設したYouTubeチャンネル「Kimono Mom」は、137万人の登録者を抱える
2020年2月に開設したYouTubeチャンネル「Kimono Mom」は、137万人の登録者を抱える

――YouTubeのコンセプトや思いなどはどんなものがあったのでしょうか。

MOE YouTubeをあまり見てこなかったので参考にしたものはありません。自分のできることを列挙していったとき、私のアイデンティティーでもある着物など和の文化、約4年間専業主婦として培ってきた家庭料理を思いつきました。それからYouTube上で「おばんざい屋さん」を営むイメージが浮かび、それをコンセプトとして動画を作ってきました。

 また、子どもが大きくなったとき、どのように育てられたのか、どんなものを食べて育ったのかを見返せるようなものを残したいと思っていました。動画であれば、それが可能だと思い、初めの頃の動画では「娘に伝えたい家庭の味」としてレシピを紹介していました。

 京都で舞妓をしていた当時、お客様から言われてずっと頭に残っているのが「身近なことこそがグローバルにつながっている」という言葉です。祇園という狭い世界こそがグローバルにつながるから、身近なことを一生懸命頑張ることが重要だと。なので、海外向けに作ることはあまり意識せず、ありのままを映し出している気持ちが大きいです。料理のチョイスもいかにも日本的な“寿司”などではなく、レンコンのはさみ揚げや焼き鳥など、ごく普通の家庭料理です。

 海外向けの動画だから着物を着ているのかと聞かれることも多いのですが、もともと着物が大好きで10代の頃から着ていたので、私にとっては日常着でもあります。マタニティーウエアは買わず、着物で過ごしたほど(笑)。着物を着ること自体私にとって特別なことではないので、そういう意味で嘘がないものをお届けしています。

妊娠中もマタニティーウエアは購入せず、着物で過ごしたそう
妊娠中もマタニティーウエアは購入せず、着物で過ごしたそう

 Kimono Momという名前は、YouTube用に考えた肩書です。初めから海外向けにしようと思っていたので、着物を着ていること、当時育児しかしていなかったのでママである自分のことを表現しました。名前を聞いただけでどんな人なのか想像がつくようにしたかったという思いがあります。

――海外の方に見てもらうために工夫されていることはありますか。

MOE 初めは日本語だけで動画を上げていたのですが、ある日ドイツの方から「MOEとSutanの動画がきっかけで、君たちの動画を理解したくて日本語を学び始めたよ」とInstagramのダイレクトメッセージで動画が届きました。これにとても感動し、私も海外の方に伝える努力をしたいと思い、字幕を自分で付け始めたり、冒頭は英語であいさつしてみたりし始めました。英語の勉強を始めたのもこの頃からです。

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