USEN-NEXT HOLDINGSは、映像配信の「U-NEXT」に代表される個人向けBtoCサービス、有線放送に代表される業務店・中小企業向けBtoBサービスとも成長が続き、業績が好調に推移している。現場の人材育成はもちろん、“経営者”の育成にも注力してきたことが、好業績の背景にあるようだ。USEN-NEXT HOLDINGSが目指す企業像や今後の展開について、宇野康秀社長CEO(最高経営責任者)に聞いた。

宇野 康秀(うの やすひで)氏
USEN-NEXT HOLDINGS 社長CEO(最高経営責任者)
1988年4月リクルートコスモス(現:コスモスイニシア)入社、89年6月にインテリジェンス(現:パーソルキャリア)を創業し代表取締役。98年に父が経営していた大阪有線放送社の社長に就任。2010年に旧U-NEXT(現USEN-NEXT HOLDINGS)社長となる。17年12月USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO(最高経営責任者)就任(現任)

――以前に定めた中期経営計画の最終年度利益目標を3年前倒しで達成し、2022年8月から新たな4カ年の中期経営計画を策定するなど、このところ業績は好調に推移しています。22年8月期第3四半期までの9カ月間(21年9月~22年5月期)の業績も、前年同期比で売上高が13.5%、営業利益が7.9%も成長しています。この現状をどう見ていますか。

宇野康秀氏(以下、宇野) ようやく思い描いていた組織の形なり事業の準備なりが整って、安定成長を最低限続けるベースができてきたというところです。次の大きな成長に向かえるステージにきていると思っています。

――USEN-NEXT HOLDINGSは、次のステージでどんな会社として成長していきたいのですか。

宇野 既に21年の段階で、今後、会社をどのような言葉で表すのがよいかという議論を進め、「ソーシャルDXカンパニー」と位置付けようと決めました。

 歴史を踏まえて言いますと、USEN-NEXT HOLDINGSのもともとの事業であった有線放送の時代から、電柱に架けた同軸ケーブル網を使って日本中の店をつないでいました。それをインターネットの高速通信網として整備してきて、今では、いつでも誰でもつながることができる高速ネットワークの環境を整えています。この“道路”のようなインフラの上を走るものを増やし、ユーザーの利便性を引き上げ、社会を豊かにしていきたい。具体的には、個人向けBtoCサービスと業務店・中小企業向けBtoBサービスを展開していく形になります。

 個人向けBtoCサービスは、これまでいろいろ進めてきました。U-NEXTの映像配信に加え、電子書籍や音楽、音楽ライブの配信などを手がけています。こうしたエンターテインメントだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が一般化したことを受け、ソーシャルサービスと言えるものも展開しています。グループ会社のUSEN Media(東京・品川)が、食の取り寄せECサイト『ヒトサラ CHEF'S MALL』を21年12月から展開。同じくグループ会社のUSEN NETWORKS(東京・品川)は、個人向け光回線サービス「USEN 光 01」と個人向けプロバイダサービス「01 NET」を21年12月から提供し始めました。いろいろな個人向けBtoCサービスが、ソーシャルというキーワードの下でグループの中で広がっていて、これはこれで伸ばしていきたいと考えています。

 一方、飲食店や小売店、商業施設、ホテルなどにネットワーク経由で音楽配信や通信回線、POSレジといったサービスを提供しているBtoBサービスのほうは、まさにこれらのサービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推し進めていきます。DX化は顧客から必ず求められるもの。言い換えれば、DX化をやり続けることで、顧客から求められる企業グループとして存続できると考えています。

――店が欲するサービスをDX化し、USENグループがプラットフォームとしてまとめて提供していく。つまり、店から見たら「何かあったらUSENグループに頼もう」という状況にしていくのが、業務店・中小企業向けBtoBサービスの目標ですか。

宇野 そうです。BtoCサービスとBtoBサービスを、ソーシャルやDXというキーワードでつながったサービスとしてそれぞれ伸ばし、ソーシャルDXカンパニーとして成長していく絵図を考えています。

USENグループが業務向けサービスで目指す「店舗DX活用イメージ」。数多くの製品やサービスを用意し、ワンストップサービスを志向する(出所/USEN-NEXT HOLDINGS 2022年8月期第3四半期決算説明資料から)
USENグループが業務向けサービスで目指す「店舗DX活用イメージ」。数多くの製品やサービスを用意し、ワンストップサービスを志向する(出所/USEN-NEXT HOLDINGS 2022年8月期第3四半期決算説明資料から)

顧客、サポート体制、コンテンツが強み

――そんなUSEN-NEXT HOLDINGSの強みはどこにあるのですか。

宇野 大きく言うと「顧客」と「顧客サポートできる体制」とやっぱり「コンテンツ」、この3つが我々の強さだと思っています。

 まず顧客でいうと、まだ海外までは十分に進出できていないですけれど、国内では北海道から沖縄まで、個人向けで約265万件、業務店・中小企業向けで約94万件、そこにホテルや病院など約3万件も加わって、一定の顧客を確保できています。

 また顧客をサポートできる体制については、BtoBサービスで特に強みを発揮しています。全国に約150の拠点があり、そこに約2000人のセールスと約1000人のフィールドエンジニアを配置して、施工・保守も含め顧客の要望にすぐ応えられる体制を敷いています。競合他社はそこまでの体制はなかなか取れません。なので今は、新しく店を開業される皆様の多くが、取りあえずUSENグループに声を掛けようという流れができている。顧客をサポートできる体制を整えて、顧客との関係性を維持・強化できているのが、特にBtoBサービスでの我々の強みだと思っています。

 コンテンツについて言えば、もともと飲食店など業務店向けの音楽配信から始まっているのですけれど、そこで磨いた、コンテンツを収集してきて編集もしくは制作する能力、この能力が音楽以外の幅広いコンテンツにも広がってきている。映像はもちろんデジタルコンテンツという意味では書籍、コミック、それに音楽ライブですね。それに格闘技などスポーツも手がけ始めています。そういうコンテンツを扱うコンテンツホルダーといわれる方々との関係が、USENグループの長い歴史の中で構築されておりまして、それが私たちの強みの1つかなと思っています。

「企業としての知名度を向上させるため、社名を変えてブランドを訴求することを検討した時期もある」と話す宇野康秀氏
「企業としての知名度を向上させるため、社名を変えてブランドを訴求することを検討した時期もある」と話す宇野康秀氏
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