デジタルマーケティング支援事業のマイクロアドは2022年6月29日、東証グロース市場に上場した。07年の創業後、一貫してネット広告事業を展開してきた。だが、その道は平たんではなかった。ネット黎明期に隆盛を極めたアドテクノロジー市場は再編が進む。プライバシー問題などで先行きも不透明だ。こうした中、マイクロアドは単なる広告配信業からの脱却を目指し、いち早くマーケティングデータプラットフォーム「UNIVERSE(ユニバース)」の構築に動いた。渡辺健太郎社長がネット広告市場の変遷を振り返りながら、上場までの道のりを語った。
マイクロアド 代表取締役
──2007年の創業からこれまでを振り返って、上場までの道のりを率直にどう感じる。
渡辺健太郎氏(以下、渡辺) 率直に言えば、すごく時間かかった。アドテクノロジー事業として創業したが、事業モデルはさまざまな変遷をたどった。ここまでくるのは長かったという印象だ。
アドテクでいうと市場の隆盛に合わせて、類似したサービスが大量に生まれ、そこからすみ分けが進んだ。大きな1つのトレンドの下、市場が拡大したというよりも、SNSの流行、動画の活用など、小さなトレンドが生まれていった。そういう意味では、サード・パーティー・クッキーの規制は久しぶりに現れた、大きなトレンドの1つと見ている。
マイクロアドという社名には、広告を消費者に合わせて細分化することで、邪魔なものから意味のある広告にしていきたいという思いが込められている。その思いは今でも同じだが、アプローチの仕方を変えている。当社はアドテク事業者として、日本では先行していたと自負しているが、ネット広告市場の隆盛につれて、むしろアドテクへの興味を失っていった。
そこで自社を広告会社ではなく、データの会社と位置付け、データの可能性を広げるための事業へと変えていった。
渡辺氏がアドテクに感じた限界とは
──なぜアドテクへの関心が失われていったのか。
渡辺 1つは市場の競争激化だ。大量に類似した広告配信サービスが登場する中で、配信のアルゴリズムなどを磨いて、広告効果を高めるためのわずかな差分を追い求め続けることにあまり意味を感じられない時期があった。我々にやる必要があるのかと自問自答を繰り返した。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー