「プラズマ乳酸菌」など健康領域に注力しているキリングループ。その先鋒として、キリンビバレッジに託された役割は大きい。2022年1月、社長に就任した吉村透留氏に、意気込みや期待の新商品、ポートフォリオ戦略などを聞いた。「いつでも工場に戻る準備がある」と冗談めかして語る、生産部門出身の新社長の意気込みとは。

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吉村 透留氏
キリンビバレッジ社長
1964年京都市生まれ。東京大学農学部卒業後、キリンビール入社。ビール事業本部生産部で米ロサンゼルス駐在。18年間生産部門を歩んだのち、経営企画などに従事。2022年1月より現職

――社長就任後、約5カ月がたちました。

吉村透留氏(以下、吉村) お客様や従業員と話したり、市場を見たりして、改めて飲料が果たすべき役割は大きいなと実感しました。キリングループはキリンビール、協和発酵バイオなどいろいろな企業がありますが、お酒は20歳以上ですし、医薬品は病気になった人向け。それに対して、飲料は老若男女すべての人が対象です。

 特にヘルスサイエンス、健康領域で、キリンビバレッジが担う責務は相当大きい。この領域をけん引し、加速する存在にしていく必要があります。

 グループでのR&D(研究開発)で、これまでもさまざまな健康素材が出てきていますが、この素材を使って健康をお客様に提供するだけであれば、サプリメントでいいわけです。ですが、ここにビバレッジが貢献できるのは、「おいしくする」ということなんですね。だから「健康をおいしく」「おいしい健康」というのが、我々の使命だなと思っています。

――これまでもキリングループは健康への取り組みを進めてきました。今の健康への取り組みは、これまでと何が違うのでしょうか?

吉村 以前は、R&Dで新しい機能性素材が出てきたから、これを生かすために何をやるか、という取り組み方でした。だから例えば、ヤクルトさんとのジョイントベンチャーでいえば、ヤクルトさんとの間で埋められるものを補完的にやろうという感じでした(編集部注:2006年から09年までキリンホールディングス[当時]とヤクルト本社の共同出資で設立、運営していたキリンヤクルトネクストステージ)。

 今の取り組みが違うのは、一貫したバリューチェーンを使ってやっていることだと思います。例えばR&Dで、我々の強みは発酵バイオ。発酵と微生物をどうやって増やして、うまくコントロールして商品をつくるか。医薬もその発酵から来る細胞の大量培養技術を生かす。素材だけではダメで、それをどうやって安く作るか。協和発酵の製造で安価に大量につくれる技術を持っているわけです。

 その点では、ファンケルとの資本業務提携ができたのは大きいです。ファンケルは本当に健康を真剣に考えている会社。(不安や不便といった)お客様の「不」の解消を経営理念にしている。今はファンケルに関係なく、キリングループの中でもヘルスサイエンスや健康領域で勝負している従業員の口から、「不」という言葉が出てきます。

 我々はビールや飲料のマーケティング手法に関しては歴史的に強いと思うんですが、化粧品やサプリメントをどうやってD2Cでお客様にお届けするかというマーケティングのノウハウやお客様理解については、やっぱりファンケルが強い。開発をして、つくって、売って、お客様のインサイトをどうやって生かすかというこのバリューチェーンを、出来上がった形でやっと進められるというのが一番大きな違いです。

――キリンの取り組みは、あれこれ手を出さずに、プラズマ乳酸菌で一点突破しようとしている点が好印象です。

吉村 まさにそのつもりでやってます。我々キリングループは“なんちゃって”ではいけないんですよ。ヘルスサイエンスと言っていて、お客様に不誠実ではいけないので。ちゃんとデータがあって、お客様に説明できる。その基礎となる文献ですとか、説明できる成果とともに、お話をしなければいけない。

 加えて付加価値を付けるとすれば、繰り返しになっちゃいますが「おいしくする」ということですね。何でもかんでも手を出すのではなく、強いものをどうやって育てるかというところから入らないといけないと思うんですよね。

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