2022年2月、良品計画の企画デザイン室長に中坊壮介氏が就いた。「地域への土着化」を掲げる無印良品の商品をどう変えていくのだろうか。同社取締役で企画デザイン室、生活雑貨部管掌の嶋崎朝子氏と中坊氏に聞いた。
良品計画 取締役
良品計画 企画デザイン室長
──新デザイン室長就任の経緯は?
嶋崎朝子氏(以下、嶋崎) 無印良品の誕生は1980年。2020年に40周年を迎えました。企画デザイン室が発足したのは約20年前で、当時、初となるインハウスデザイナーの募集に当たり、無印良品におけるデザイン室の位置付けやデザイナーの役割が議論されました。いわゆる「デザイン」する会社ではないこともあって、求めるデザイナー像を示した当時の人材募集時のコピーが、「デザインをしないデザイナー」。22年2月に企画デザイン室長に就任した中坊壮介は、その企画デザイン室立ち上げメンバーの一人でもあります。
中坊壮介氏(以下、中坊) 03年春に企画デザイン室が立ち上がって、「デザインしないデザイナー」は自分を入れて4人いました。ほかにも、社内にいた3人を合わせた7人でスタートしました。
私自身は、企画デザイン室で3年間働いた後、英国に渡り、06年からジャスパー・モリソン氏のデザイン事務所に勤めました。私が企画デザイン室にいた頃から、ジャスパーは無印良品のプロダクトデザインを手掛ける社外デザイナーの一人として付き合いがありました。英国に行くと、今度はジャスパー側の担当者として、09年まで無印良品との仕事を続けました。
その後、10年に地元の京都に戻って、自身のデザイン事務所を設立し、ジャスパーの事務所で担当していた無印良品の仕事もそのまま持って帰ったような形で、それから4、5年間は継続。同時に、自分も社外デザイナーの一人として、無印良品と仕事をしてきました。ずっと、無印良品に関わってきたことになります。
──これまでに社外のデザイナーとして手掛けてきた商品を教えてください。
中坊 例えば、ボウルやザルのシリーズ。キッチンツールなど、ハウスウエア領域の商品が多いです。ジャスパーの事務所にいた頃には、腕時計などもありました。
時代に合わせてアップデート
嶋崎 近年、社内では、時代性や環境意識のさらなるなる高まりなどに応じた役割のアップデートを検討する中で、無印良品の哲学は変わらず持ちながら、次のあるべき姿を模索しています。ここであえて、社外から中坊を企画デザイン室長に迎えたのは、今までの経緯を理解したうえで、「これからの無印良品」の具現化を任せるのに適した人だという判断から。さまざまな形で無印良品のデザインに関わってきた、無印良品の歴史やフィロソフィー、無印に求められる要素などをよく知っている人物です。外からの視点も生かして、社会全体が求めるものに対応していきたいというのが意図としては大きいですね。
──「時代や社会環境の変化に応じた無印良品の役割のアップデート」とは?
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