イタリアのミラノサローネやフィンランドのハビターレなどの国際見本市や、多くの海外プロジェクトに参画するプロダクトデザイナーの岩元航大氏。フランスのメゾン・エ・オブジェが期待の若手デザイナーを表彰する「Rising Talent Awards 2022」にも選出された。素材に対する独自のアプローチで、シンプルな造形や時空を超えた感性を表現する作品が注目を集める。
プロダクトデザイナー
「日本の文化や伝統だけを伝えたいわけではない。昔はあったのに現在はネガティブに感じられるものの価値観を、いかに変えられるかを作品のポイントにしている」と岩元氏は話す。その1つが、古くから伝わる「へぎ」と呼ばれる木材の製材手法にヒントを得たデザイン家具「PARI PARI, round table(以下、PARI PARI)」だ。2021年に英デザイン誌『Wallpaper Magazine』と米国の広葉樹輸出協会が世界各国の若手デザイナー20組を集めて主催した作品開発のプロジェクト「Discovered:Designers for tomorrow(以下、ディスカバード)」に参加して発表した。デザイナーが現地の工場に行けず、リモートによる製造過程を逆手に取った作品だという。
「パリパリ」と木の皮をむくから「PARI PARI」
ディスカバードのテーマは「自宅生活の長期化で木が人々にとってどのように心の支えになるのか?」。そこで1つの大木を再現したラウンドテーブルを作り、表面に「パリパリ」と人の手で木の皮をむく、へぎのような手法を応用した。あえて表面に薄い木の板を何層にも貼り、それを人の手で裂く工程を作り出すことで木の幹のようなざらつきがランダムに現れる。自生する木と同じように、1台ごとが個性を持った製品となる。「目の前で作品をチェックできない」というネガティブな悩みを、ポジティブな提案に変えた。
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