徳島県の山間部にある那賀町。人口約1000人の木頭(きとう)地区で、「未来コンビニ」などを展開するKITO DESIGN HOLDINGS(徳島県那賀郡)。この地で生まれ育った藤田恭嗣代表取締役が仕掛ける地方創生の全貌とは?

藤田恭嗣氏(写真/名児耶洋)
(写真/名児耶 洋)
藤田 恭嗣(ふじた やすし)氏
KITO DESIGN HOLDINGS 代表取締役
1973年徳島県那賀町木頭地区生まれ。94年大学在籍時に創業、96年法人化、99年メディアドゥ設立。2013年木頭ゆずの栽培・加工品販売を手掛ける「黄金の村」設立。17年KITO DESIGN HOLDINGS設立。18年グランピングを楽しめる「CAMP PARK KITO」、20年「未来コンビニ」、21年6月JR徳島駅コンコース内に「YUZU CAFE Kitchen」をオープン

――「未来コンビニ」とは?

藤田恭嗣氏(以下、藤田) 木頭地区の買い物環境改善のためにオープンしました。それまで、一番近いスーパーまで車で片道1時間ほどという状況でした。コンセプトは「世界一美しいコンビニ」。コンビニエンスストアは確かに便利ではありますが、チェーン店が多く、デザイン的なアプローチはほかにはありません。先日、レッド・ドット・デザイン・アワードのリテールデザイン部門で最優秀賞のベスト・オブ・ザ・ベストを受賞しました。外からも目を引く黄色い柱は、名産の木頭ゆずの木々がモチーフです。

KITO DESIGN HOLDINGS傘下が運営する「未来コンビニ」(2020年4月オープン)。コンセプトは「世界一美しいコンビニ」。近隣の買い物環境改善に加え、カフェを併設するなど、子供たちに文化交流を促す機能もある(画像提供/KITO DESIGN HOLDINGS)
KITO DESIGN HOLDINGSのグループ企業が運営する「未来コンビニ」(2020年4月オープン)。コンセプトは「世界一美しいコンビニ」。近隣の買い物環境改善に加え、カフェを併設するなど、子供たちに文化交流を促す機能もある(画像提供/KITO DESIGN HOLDINGS)

――未来コンビニが目指すものは?

藤田 2つあります。1つは、ここを目的地に訪れる人を増やすこと。事業を続けるには、ここを訪れる人々を増やし、“外貨”を稼ぐ必要があります。現在、休日は約200人が訪れるようになり、オープンから1年半で累計来客者数は4万人を超えました。もう1つは、文化的な環境を整えて、子供たちのクリエイティビティーを育むこと。ここで生まれ育った自分の幼少期の体験でありコンプレックスでもありますが、文化や社会との接点が不足しています。デザインの力を感じる体験や、世界中からやって来る人たちとの交流を通じて、子供たちに文化を伝えていきたい。未来コンビニは、人々が集まれるようにカフェを併設し、定期的にイベントを開催しています。

地方に足りないピースは「経営」

――こうした事業を始めた狙いは?

藤田 生まれ育った土地に恩返ししたいと長年思ってきました。2013年に木頭ゆずを扱う「黄金の村」(徳島県那賀郡)を立ち上げ、14年に工場を開設。17年にキャンプ場運営の会社を立ち上げました。宿泊して木頭の自然を体感できる場として、18年10月にグランドオープンした「CAMP PARK KITO」はコロナ禍でも盛況で、繁忙期の8月の売り上げは1000万円を超えるなど、順調に成長しています。未来コンビニを含めると、売り上げ規模や知名度など、ある程度の事業の柱ができた実感があります。

18年10月にグランドオープンした「CAMP PARK KITO」。大自然の中でグランピングを楽しめる。大浴場やレストランも備える(画像提供/KITO DESIGN HOLDINGS)
18年10月にグランドオープンした「CAMP PARK KITO」。大自然の中でグランピングを楽しめる。大浴場やレストランも備える(画像提供/KITO DESIGN HOLDINGS)

――それぞれ法人を立ち上げる意図は?

藤田 経営に携わる機会の提供が大事だからです。私は、方針やビジョンなどを示してかじ取りをし、資金を拠出しますが、各会社のマネジメントには踏み込まないと決めています。そうしなければ、経営者が育たない。地方創生に圧倒的に足りないのが「経営」というピースです。現場で悩んで会社を育てる経験が伴わなければ、持続性のある事業とはなりません。立ち上げから数年間は財務会議に参加するなど、私が何を気にして、どこを見ているかなど、経営の視点を共有し、今ではすべてを現場に任せています。

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