ベストセラー本『人生が変わる片づけの魔法』で知られる片づけコンサルタントの近藤麻理恵氏が独自に編み出した「こんまりメソッド」は、今や世界的に知られるようになった。そのきっかけとしてNetflixのオリジナル番組『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法』の存在は大きい。2021年8月には最新作を全世界に配信開始。「仕事と片づけ」という新たなテーマを打ち出した。日本国内から世界へ、自身をブランドコンテンツとして発信する同氏の取り組みについて聞いた。

ベストセラー本『人生が変わる片づけの魔法』で知られる片づけコンサルタント、“こんまり”こと近藤麻理恵氏
ベストセラー本『人生が変わる片づけの魔法』で知られる片づけコンサルタント、“こんまり”こと近藤麻理恵氏
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 「片づけ一筋の人生です」と、近藤麻理恵氏は自らを語る。片づけコンサルタントとしての活動を始めたのは今から約20年前の大学在学中から。その後、2011年に出版されたベストセラー本『人生が変わる片づけの魔法』で独自の整理整頓術である「こんまりメソッド」を確立した。今や単なる片付けの手法を超えて、世界に発信する1つのブランドになりつつある。

 だが、当時はこんまりメソッドの初期ステージ。「仕事人間の自分が独身の頃に書いた本ですし、本当に片づけのことしか書いていなかった」と振り返る言葉からも、それが分かる。あくまでも「片づけ」に終始していた。

 こんまりメソッドに大きな変化をもたらしたのは19年1月に全世界配信されたNetflixオリジナル番組『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法』だろう。その数年前から夫であり、現在KonMari Media社のCEOを務める川原卓巳氏と共に渡米し、世界的に注目され始めていたが、Netflixの番組が起爆剤となった。

2019年1月から、Netflixでオリジナル番組を配信。21年8月には最新作『KonMari ~“もっと”人生がときめく片づけの魔法~』の全世界配信がスタート
2019年1月から、Netflixでオリジナル番組を配信。21年8月には最新作『KonMari ~“もっと”人生がときめく片づけの魔法~』の全世界配信がスタート
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 「日本で活動していたときから片づけを行った結果として、人生が変わっていった方々を目の当たりにしていました。それを世界でもやってみることになった」と話す本人だが、その反響は思った以上だったのではないか。米国では社会現象になるほどで、テレビエンターテインメント界で最も権威あるその年のエミー賞でも評価された。リアリティー番組の司会者を称する「ホスト賞」に近藤氏がノミネートされたことで、注目度はさらに上がっていった。

 「Netflixの影響力はかなり大きいと思います」と、自身も語る。同時にあることに気づいたという。それはこんまりメソッドの普遍性だ。「番組を通じて、国境を越えて『こんまりメソッド』をお伝えできていることを実感する中で、“ときめく”ものに囲まれながら生きたいという根本的な意識を世界中の方が持っていらっしゃることが改めて分かり、その反響に驚きました」

SNSにあふれた「Kondo-ing」

 番組の配信後の翌20年、世の中がコロナ禍に見舞われたときも再び注目される。ステイホームにより在宅時間が増えたことで、シンプルで実行しやすい、こんまり流の片づけを始める人が増えた。その行為を動詞化した「Kondo-ing(コンドーイング)」という言葉がSNS上に再びあふれたほどだ。

 こうした反響を経て、こんまりメソッドが次のステージに移ったことが明確に打ち出されたのはやはりNetflixのオリジナルシリーズだった。21年8月31日に全世界配信された新作『KonMari ~“もっと”人生がときめく片づけの魔法~』で紹介したのは家の中の片づけだけではない。キャリアや人生と密着した片づけの考え方を指南するものにもなっている。

 「これまで職場や人間関係についても片づけたいというご意見をいただく中で、今回の企画が出来上がった経緯があります。これまでやってみたことのない試みだったので、『どうやったらいいのか分かりません……』と不安を口にすることもありました。それでも、ワークライフバランスや仕事そのもののやり方、時間の使い方に至るまで、人生すべてを“ときめく”ものにしていきたいと思われる方が多い中で、片づけでお役に立ちたいという思いの方が勝っていきました」

 新作では3つのエピソードを配信している。栽培園を営む父と息子、コーヒーショップを経営するワーキングマザー、教会コミュニティーに参加するキャリアチェンジ世代の女性が登場し、それぞれに対して近藤氏が活動しやすい環境づくりに導いていく。

 舞台は米国だが、「悩みのポイント」は普遍的という。「職場の共有スペースの片づけや働き方そのものを見直すことに関して、悩みの中身は一緒です。違うのは外側だけ。米国に住めば住むほど、片づけに関して日本との違いが分からなくなっているほどです」

 こう言い切ることができるのはこんまりメソッドのセオリーに一貫性があることも大きいのではないか。この問いに対して近藤氏は「単なる片付けという側面でなく、片付けは人生の一部だと思っています。それによって、ときめく感動を磨いていくこともできます。片づけを人生にどう生かすことができるのか、お見せしたいと思いました」と答えた。

 本人は自身の見せ方やコンテンツとしての“こんまり”のブランディングについて意識していないというが、新作では米国の自宅で夫の川原氏と2人の娘と共に出演。妊婦姿で登場しているのは印象的だ。なお、この撮影後、21年4月に息子を出産したことを自身のインスタグラムで報告した。いわば、“こんまり”のブランディングは、近藤自身の暮らしや家族、キャリアをも含むものになりつつある。

 背景には、“こんまり”というコンテンツのターゲットを主婦層以外にも広げたいというNetflix側の狙いもあるだろう。だが、近藤氏自身のライフスタイルの変化によるところは大きい。「この10年で子どもが3人でき、家庭生活を重視するようになりました。片づけによって毎日の暮らしをより丁寧にしていくことや、家族にとってときめくような毎日にするにはどうしたらいいのだろうと、思い至っています。それもあって、夫と一緒に出演する機会が増えているのだと思います」

KonMari Media社の社長を務める夫の川原卓巳氏と出演する機会も増えている
KonMari Media社の社長を務める夫の川原卓巳氏と出演する機会も増えている
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 自らのテーマだった「片づけ」をメソッドとして確立し、Netflixの番組を通じてそれをワールドワイドに普遍化した。さらに、学生時代、独身時代、家庭を持ってからと、自らの人生の変化に結び付けた。それによって、こんまりメソッドは国籍や属性、環境、ライフスタイルといった違いを超えてユーザーに受け入れられるようになっている。コンテンツの核は一貫させつつ、自らの変化や時代の変化に順応させてきたことが、世界に通じる“こんまり”ブランドを確立させた秘密といえそうだ。

(写真提供/Netflix)