日本を代表するデザイン関連団体、JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会)理事長に、2021年6月、NOSIGNER(横浜市)代表の太刀川英輔氏が就任した。歴代最年少の理事長誕生の背景や、デザイン業界の課題、これから取り組むことなどを聞いた。
NOSIGNER代表/進化思考家/デザインストラテジスト
/JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会)理事長/
慶應義塾大学特別招聘准教授
──JIDA理事長就任の経緯は?
太刀川英輔氏(以下、太刀川) 21年春に、前理事長をこれまで8年間続けてきたGKデザイン機構社長の田中一雄さんから「理事になってもらいたい」と相談を受けました。実は、それまでもずっと理事に推薦いただいていて、「まだ早いと思います」と固辞していました。でも今回は、田中さんが任期満了のタイミングだったこともあって、意思を引き継ぎたいと理事をやることに決めたんです。ただ、蓋を開けてみると副理事長をやってもらいたいということでびっくりしました。
新しい理事長にはトヨタ自動車でデザインをけん引した御園秀一さんが就任する予定で理事会は動いていました。御園さんは、田中理事長時代の副理事長で、彼の理事長就任に異論のある理事会メンバーはいませんでした。ところが、御園さんの理事長就任の2日前に突然、「太刀川君、理事長をやってくれないか」と御園さんと田中さんから連絡があったんです。
──どういうことでしょうか?
太刀川 御園さんの言葉をそのままお借りすると「JIDAを若返らせたいんだ」と。これについては僕もまったく同じことを考えていたので、突然の提案に驚きつつ、理由には納得しました。僕がJIDAの歴史上で最年少の理事長になれば、組織は確かに物理的に若返ります。しかしまったく柄ではないなと思いながらも、真意をくみ取って、やるなら本気でやろうと理事長のバトンを受けることに決めました。
デザインも変わらないといけない
──日ごろからデザイン業界が抱える課題を感じていたのでしょうか?
太刀川 理事を引き受けようと決めたのも、お世話になっていた田中さんたちの推薦と併せて、日本のインダストリアルデザインが今、大事な時期にあると感じていたからです。「産業のためのデザイン」を意味するインダストリアルデザインに今、何が起きているかと言うと、産業自体がドラスチックにメチャクチャな速度で変わっているわけです。その波に日本は乗り遅れつつある。だから必然的に、インダストリアルデザイン自身が変わらないといけない時期でもあります。
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