日経クロストレンドと日経MJの共同企画「マーケター実像調査2021」の中で、尊敬するマーケターとして名前が挙がったのが、PR会社プラチナム(東京・港)代表の吉柳さおり氏だ。今後、企業のPRにESG/SDGsの視点が不可欠という同氏に、その背景やマーケターが変化の時代を生き抜くための心得を聞いた。

吉柳さおり氏
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吉柳 さおり(きりゅう さおり)氏
プラチナム代表、ベクトル取締役
大学在学中、PR会社ベクトルにアルバイトとして入社、創業に参画。マーケティング/PR市場を創造しつつ、多くの企業で事業コンサルティングを手掛ける。2002年、ベクトル取締役に就任。04年にベクトルグループのPR事業会社プラチナムを設立

Withコロナ時代に、PR業界で起きた大きな変化は何ですか?

2020年の4~5月は業績の悪化を予測し、コスト削減のためマーケティング活動をストップする企業が増えました。当然ながら、それでは物が売れなくなります。私たちはもともと「クライアントと併走すること」を行動指針としてきました。コロナ禍においては、一緒にマーケティング活動の「ニューノーマル」を探す取り組みを強化しました。そこで数多く手掛けたのは、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の支援です。

 例えば、大手化粧品メーカーのケースでは、従来は店頭販売がメインでしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で百貨店は閉まっています。そうした中で、ECのストアを立ち上げて、認知や集客、ライブコマースを展開し「テレワーク時代の映えメイク」などと訴えてコンバージョンさせるというものです。

 ベクトルグループには、マーケティングのカスタマージャーニーにおけるほぼ全てのDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのソリューションがあります。プラチナムでも多くのD2Cを手掛けてきたので、培ったノウハウを複合的に提供できます。

 マーケティングのDXがかなり進んだという印象があります。緊急事態宣言などの影響で、突然商品が売れなくなってしまう状況では、企業も躊躇(ちゅうちょ)している場合ではなく、とにかくやらねばというチャレンジ精神が生まれています。以前から提案していたDXの案件が、垂直立ち上げで受注にもつながっています。

コロナ禍で通用しない「PRドリブン」

コロナ禍で、人々の行動やライフスタイルも大きく変化しています。

高速にPDCA(計画・実行・検証・改善)を回すことで、その変化を追いました。私たちは、通常は「○○女子が来る」といったようにPRドリブン(訴える内容を決めてから製品やサービスを作り込む、あるいは投入時期や認知拡大の手法を決める手法)でマーケティングをします。ところが、新型コロナウイルス感染症拡大によって未来を中長期的に見通すことが難しくなってしまった。そこで、ターゲット層の生活をショートタームでウオッチする取り組みを強化しました。

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