ラジオ番組や女性誌で女性の悩みに答え続けている作詞家・コラムニスト・ラジオパーソナリティーのジェーン・スー氏。新刊『女のお悩み動物園』(小学館)も話題だ。そんな彼女に聞いた、今どきの女性の悩みとは。そしてそこから見える企業と消費者のコミュニケーションに必要な要素とは。

ジェーン・スー氏
作詞家・コラムニスト・ラジオパーソナリティー
1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、中野信子との共著に『女に生まれてモヤってる!』(小学館)他、著書多数。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、TBSラジオポッドキャスト『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』放送中(2021年1月現在)

 小学館の女性向けファッション誌「Oggi」の連載「女のお悩み動物園」が2020年11月に書籍化された。相談者を16種の動物に例え、キャラクター別に悩みとの向き合い方を提案する。「私たちは、“社会”という“動物園”に暮らしている“動物”のようなもの」。そう語るジェーン・スー氏に、今どきの女性の悩みやタイプ、そうした女性にさまざまなメッセージを発信する企業コミュニケーションのあり方を聞いた。

『女のお悩み動物園』(小学館)
『女のお悩み動物園』(小学館)

PV至上主義ではこぼれ落ちるものがある

新刊『女のお悩み動物園』では、女性を16のタイプに分け、それぞれ動物に例えて紹介されています。

もともとの連載は「実録・女の動物園」というタイトルで、さまざまなタイプの女性を動物に例え、「こんな人、あなたの周りにいませんか?」と投げかける、いわゆる「あるある」ネタとして書いていたんです。そうした書き方に今よりも寛容で、遊びの部分も許される時期でした。

 その後、この連載は内容がお悩み相談に変わるんですが、それらをまとめて書籍化しようとしたとき、どうしようかと。考えた結果、仕事やプライベートなど悩みの内容で分けるのではなく、女性のタイプごとに「こういう人だったらこういう悩み方するよね」と分類してみました。仕事の悩み一つ取っても、「私の仕事を誰も手伝ってくれない」と悩む人もいれば、「人に『これをやって』となかなか言い出せない」と悩む人もいます。それって環境や事象の差というより性質の差じゃないかと思って。分類の軸を変えてみたら、結構いい感じに振り分けられたと思います。

新刊『女のお悩み動物園』では女性を16のタイプに分け、それぞれ動物に例えて紹介する
新刊『女のお悩み動物園』では女性を16のタイプに分け、それぞれ動物に例えて紹介する

悩む女性に共通点はあるんでしょうか。

悩みを抱える人にまず伝えたいのは「最短で答えを求めるのはやめたほうがよい」ってことですね。これは太字で書いてほしいくらい。

効率重視になりすぎてしまっているということでしょうか?

そう。みんな損をしたくないというか、答えに早くたどり着きたがりすぎる。そんなの面白くないけど大丈夫? という感じがします。

その傾向は近年強くなっているのでしょうか。

どうだろう。以前と比べてどうかは分からないけれど、昔からその傾向はあるんじゃないかな。テクノロジーの進化で社会のスピード感が上がったから、そう感じるだけで。

テクノロジーが発展した分、情報へのアクセシビリティーが高まっていますから、「これがベスト」という答えを求めやすくなっている側面はあるかもしれませんね。

思ったらすぐ発信できるという点も影響しているでしょうね。テクノロジーの進化と焦りが比例しているようにも思います。

 “PV至上主義”の影響もあると思います。例えば、私はラジオの番組を持っています。長くやっていれば最終回を迎えるものもありますが、それは必ずしも聴取率が悪いからではない。コンテンツの善しあしって、数字だけで測れるものじゃないじゃないですか。

 でも、ウェブ媒体が登場して、雑誌や書籍でいうところの部数よりシビアなPVが注目されるようになって、評価が数値化できるようになった。それで全ての良しあしを決めようとする傾向はあるんじゃないかと思います。「PV数は取れないだろうけど発信したいことがある」「後々の人に残していきたいコンテンツがある」という発想が隅に追いやられてしまうこともあるかと。

効率重視になりすぎる要因には “PV至上主義”の影響も
効率重視になりすぎる要因には “PV至上主義”の影響も

それはマーケティングにも通ずる話だと思います。商品やサービス開発において、いくらもうかるのか、何%利益が上がるのかということが問われがちですが、ブランディングや長期的な企業戦略という視点では数字に表れない部分が大事だったりする。

そう! そういうニュアンスの話ができない。

 定量化すること、数値化すること自体は私も大事だと思います。でも、それが全てだと思うこと、「数字が取れないのにやる意味は何ですか」と思ってしまうことはまずいんです。

 例えば映画だと、どのハリウッド俳優が出演しているかによってヒットするかどうかがある程度決まるといわれていますよね。トム・クルーズがやる限り「ミッション:インポッシブル」シリーズは売れるだろうなというのはあるじゃないですか。でもそれのみの基準で映画が製作されたらつまらないですよね。全部が“記号”になっていくと、その記号に当てはまらないものがこぼれていく。

記号化は人に対しても働くかもしれません。マーケティングでも、「30~40代の女性」というと主婦またはワーキングマザーが主流で独身女性はターゲットになりづらかったり。

そうそう。しかも独身の中でも経済力には差があって、裕福な人とそうでない人とに二極化している。そんなこともあまり重視されていないと思います。