DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れを取り戻すべく、政府はデジタル庁を設立し行政の抜本的な効率化を進める方針だ。その最高責任者で 「デジタル庁で霞が関のヒエラルキーを壊す」と話す平井卓也デジタル改革相に、IT評論家の尾原和啓氏がデジタル化した日本の未来を聞いた。
2020年9月に発足した菅義偉政権の看板政策と呼べるのが「デジタル庁」だ。国全体のDXを目的としたデジタル分野に特化した行政機関で、21年9月の設置を予定する。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う行政の対応では、PCR検査のデータがFAXでやり取りされる、地域によって給付金の手続きに時間がかかるなど、デジタル化の遅れが指摘されてきた。デジタル庁の設置で、日本は何を目指し、どう変わっていくのか。
デジタルの力をクリエイティブに
尾原和啓⽒(以下、尾原氏) 改めて政府が掲げるデジタル化推進の背景を教えていただけますか?
平井卓也氏(以下、平井氏) 新型コロナウイルスによって働き方や学校、医療現場、エンターテインメントなど、あらゆる分野において日本の問題が顕在化しました。生活が不自由になり「人生がつまらなくなった」と感じている人もいるかもしれません。その不自由さを何とか克服しなければならないと考えています。そういう意味で日本はデジタルの力をクリエイティブに使うという発想がなかったと思うんです。
もちろんこれまでもデジタル化自体は進めていました。01年施行の「IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)」に基づき、光ファイバー、携帯電話、データサービス、インフラが整備されました。それを本当の意味で、最大限に使いこなせていなかったように思います。仕事のやり方を見直さずにデジタル化したことで、いざというときにエンドツーエンドでサービスを完結できなかったといった形です。これは国だけではなく、民間もそうだったのではないでしょうか。そうしたことが積み重なり、日本のデジタル化は周回遅れとなってしまったわけです。
そこで、IT基本法を抜本的に改正し、新たな法案に作り替えることにしました。日本が今やらなければならないのは「出遅れている」ことをアドバンテージにし、DXを最大化すること。日本は基本的なベースとしての技術や人材、インフラも十分ある。あとはどのような理念のもとに進めていくかということだけです。その指針としてデジタル庁をつくることにしたのです。
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