2020年9月から配信されているテレビ&ビデオエンターテインメントサービス「ABEMA」発の異色の俳優育成オーディションバトル番組『主役の椅子はオレの椅子(以下、オレイス)』。仕掛け人座談会の後編は、オンライン時代の舞台の在り方や現代の若者の価値観などで盛り上がった。
※日経トレンディ2021年1月号の記事を再構成
<前編はこちら>
今後はオンラインとリアルの両輪で楽しむ時代
――今後、ABEMAの中で舞台コンテンツやビジネスを展開していく狙いはあるのでしょうか?
藤田晋氏(以下、藤田) 具体的に何かが決まっているわけではないですけど、舞台には興味を持っているので、何かしらうまくABEMAと連係できたらと思っています。もともとリアルなイベントというのはネットによって市場規模が大きくなったと思っています。それこそネットからイベント情報を仕入れたり、申し込むきっかけがSNSだったり……。
――2020年6月には「ABEMA PPV ONLINE LIVE(アベマ・ペイパービュー・オンライン・ライブ)」が実装されました。
藤田 舞台のオンライン配信はまだ行っていませんが、人気の公演となるとチケットが買えない人が多くいます。それこそネルケプランニングさん主催のものはチケット即完はよくある話だし、席が買えなかった人たちに“配信”で見てもらえたらいいなぁと思っています。そういう意味では新型コロナウイルス感染症が収束しても、オンライン配信の需要はあると考えていて、現場に行けなくてもいいから一緒の空気を感じたいという人に対してコンテンツを提供したいと思っています。
松田誠氏(以下、松田) 今後はオンラインとリアルの両輪で楽しむ時代になると思います。そうなると「舞台のチケットが取れないので、仕方がないからオンラインで」というのではなく、「オンラインでしか楽しめない何かがある」ということが重要。例えば、最近は最前列のセンター席からの目線で楽しめるオンライン配信というのがあったりします。その席はファンなら当然誰もが座りたいようなプレミアシートなわけですけど、オンライン配信にすることで、誰もが同じような臨場感を味わうことができます。さらに“推しカメラ”といって自分が推している俳優だけを見続けられるサービスも動き出しています。
尾上松也氏(以下、松也) それは面白いですね。
松田 今までオンライン配信というのはリアルの代替えのような位置付けだったと思うんですけど、そのマインドのままでは文化は形成されていかない。ネットはネットでさらに面白くなるような試みを考えていく必要がある。リアルでは体験できないことを配信でやっていこうと、業界全体が向かっている時期だと思います。